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「しかし、もう10時まわってんでー？
いっつもこんな遅くまでやってるん？」
「まぁ、はい。」
「えらいなあ」
偉いと言われても、仕事に追われて時間切り売りして、
ただ忙殺されているだけ。
もっとこなれていれば早く帰れたのかもしれないけど、
頼られて断り切れずにがむしゃらにやるしかないだけ。
「…別に、えらくなんかないよ。デザイナーならこれぐらい普通だから。」
「謙遜せんでもええやんか」
「だってほんと、わたしなんて、それなりだから。
流星みたいに、キラキラして、みんなを惹きつけられる仕事じゃないし。」
「俺やって、モデルの仕事始めた頃は悩んだりしてんで？」
「え？」
モニタを見ていた目線を横に移すと、頬杖をついたままこちらを見ていた流星と目があった。
「この仕事って、世間からどう見られてんのかとか、必要とされてるんかなとか。」
意外だった。
流星のように華やかな世界で活躍している人が、わたしと同じような思いを抱いていたなんて。
「でも今はさー、俺が服を着ることでその服が売れるんやったら、なんか役に立ててるんかなって思うようになった。」
そう言った流星の目は自信に満ちていて、
仕事に対して誇りを持って臨んでいるのがよくわかった。
「意味のない仕事なんてないんやなって思ってん。」
意味のない仕事なんてない。
そう言い切ってくれた。
「ゆりの仕事だってまさにそうやん。」
「うん…そっか。そうだよね」
わたしが笑うと、流星も満足そうに笑った。
「それにな、手に職あるのもすごいと思うでー？」
「…ありがとっ」
「こんなきれいなの、俺には絶対でけへん」
「ベタ褒めじゃんw」
「いくらでも褒めたるで？w
眠たそうな目がめっちゃかわええ！」
「やめてー」
深夜のオフィスで褒めの応酬って、これなに？(笑)
冷静になったらすごく恥ずかしいというかシュールな状況だ。
2人とも笑ってきちゃってる。
「真剣な目にときめいてまうー」
「恥ずかしいから！」
「笑顔に惚れてまうわあ〜」
照れ臭くて、両手で自分の腕をさすさすと擦る。
賛辞の言葉よりも、からかうような流星の声色がくすぐったい。
「ゆりも、もっと自分で自分のこと褒めろ！」
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作者名：Lucio | 作成日時：2019年6月9日 14時
