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時刻は午後10時半。
淳太さんと桐山さんは施工に行っており不在。
わたしの作業を手伝ってくれていた廉くんは、昨日泊り込みだったのでさすがに帰らせた。
いま事務所ではわたしとしげちゃんだけで、マウスとキーボードの音が響き渡る。
「ほんとごめん…
しげちゃんも自分の仕事あるのに」
「こっちはメドついてきてるからええねん！」
「そっか。なら、なおさらよかったの？
せっかく早く上がれそうなんだったら、彼女のとこ行くとか…」
あるでしょ、といってしげちゃんのほうに向き直ると、モニタを見ながらどこか遠い目をしているように見えた。
「……かれてん」
「え？」
「……別れてん！彼女とは！」
「えぇ！そうなの！？」
頭をガシガシとやりながら答えたしげちゃんに、作業の手もつい止まる。
椅子から身を乗り出して詰め寄った。
「やっぱ、仕事が忙しくてすれ違いで、とか…？」
だとしたら、わたしも多忙の原因の一端を担ってしまっているんでは…
コンペの時なんか毎日のように残業に付き合わせちゃってたし、
今もこうやって遅くまで手伝ってもらって…
「なんか、…すまん」
「ぶは！すまんてなんやねん！」
眉をキュッと寄せながらも、いつもの笑顔をみせるしげちゃん。
「ええねん。忙しいからって、うまくフォローしてやれへんかった俺も悪いねん。
フォローするどころか…“なんで分かれへんねん！？”ってイラついてまう。
お互いのために良くないなーと思ってさ。」
「…そっか。彼女さん、不安だったのかな」
「不安…そうやなあ。そらそうやろなあ。」
そう言って、しげちゃんがこっちをじっと見る。
「ゆりちゃんは、どうやねん。」
「え、わたし？どうって？」
「今井様が嬉しそうに教えてくれたで〜？
西緋の案件、こんな頑張れるんもそいつのためか？」
ちょっと！なに喋ってんですか今井様！！
「ち、ちがうもん！仕事とそれとは、別だから！」
焦ってしまい、思いっきり否定すると豪快に笑われた。
「ぶははは！
やっぱゆりちゃんさすがやわ！」
しげちゃんと恋バナなんてくすぐったいけど。
「仕事に理解ある人やとうまくいくんやろね」
「ウチらみたいなのはそれがマストだね。」
「っちゅーわけで、ゆりちゃん、俺とかどう！？」
「軽いなぁw」
しげちゃんが笑ってるから、まあいいかな。
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作者名：Lucio | 作成日時：2019年6月9日 14時
