★ ページ39
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誰もいなくなった営業のフロアで、ひとりPCに向かっている。
商談相手のドラッグストアに送る資料の作り直しのためだ。
一度OK出ていたのに。心の中だけで舌打ちをした。ちっ。
長い前髪をかきあげて、集中し直す。
そこへ飛び込んできた、明らかにテンションの違う人物。
「ショーコさんショーコさん！」
「…小瀧！？どしたの」
「営業のフロアまだ電気ついとったんで、おるかなーって。」
その手にはバインダーが握られていて、その中の一枚を見せられる。
「これ、新しく出るブランドの化粧箱なんすよ」
「へえ。すごいじゃん。初仕事だね。」
「…へへ。ショーコさんに見てもえてうれしいす」
そう言って笑う。
憧れの仕事が形になっていくのが、
嬉しくてたまらないというような顔だ。
ねえ。
あんたのこんな顔が、あたしずっと見たかったのかも。
よかったね。小瀧。
「さあ、残業中なんでしょ？油売ってないで仕事に戻りなさい。」
「はーい」
ゆるい返事をして営業のオフィスを出て行く小瀧。
箱の校正紙置いていっちゃったけど、
あいつ、ほんとにこれ見せに来ただけかい…
「……キレイだなぁ」
箱のデザインを、改めてまじまじと見つめる。
ジャスミンの花と、木目調のアクセントがあしらわれていて、金色のロゴの箔押し。
きっと棚で映える。
店頭に並ぶのを、早く見たいと思った。
楽しみだね。
席を立って、少し前まであいつが座っていた、今は空席となっているデスクに座ってみる。
いつかここに、また別の新人が座る日が
きっとくるんだろう。
・
「…沖田？」
「あ、横山課長…」
後ろから声をかけられて、椅子ごとくるりと振り返ると
横山課長の姿があった。
「まだおったんか。」
「はい…でももう、上がります」
「そっか。…じゃあー、たまには付き合うか！？」
手でお酒を飲むジェスチャーをする課長。
誘ってくるなんて珍しいけど、あたしの様子がいつもと違うのを、感づかれているんだろうか。
上司に気を使われるなんて。
沖田薔子、一生の不覚。
「……課長のおごりなら。」
「怖いなー！沖田、酒豪やからな！」
しょうがないから、付き合ってあげようかな。
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作)沖田さん7話で一度出てます。オリキャラのエピソードにお付き合いありがとうございました。
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作者名：Lucio | 作成日時：2019年6月9日 14時
