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プロジェクトの資料を回覧しに、マーケティングのフロアへ足を運んだ。
現在の小瀧の上司にあたる、村上さんに印鑑をもらうついでに談笑。
相変わらずべっぴんやなーなんて、このご時世よく言う。
関西人のノリなんだろう。
「ところでどうですか、小瀧はちゃんとやれてます？」
「がんばってんでー！新商品のプロモーションにも気合はいっとるしなあ」
お、噂をすればやで、という村上さんの声に顔を上げると、タイミングよく小瀧がフロアに入ってきたところだった。
営業だったときのスーツとは違い、オフィスカジュアルと言える服装を着こなしている。
フロアになじむ姿は、もうすっかりマーケティングの人間になっていることを物語っていた。
その小瀧の後ろに、1人の女性がついて歩いてくる。
来客用の入館証を首からぶら下げているから、外部の方なんだろう。
「あちらの方は…？」
「ああ、デザイン事務所のデザイナーさんや。コンペで勝ったの見たやろ？」
オフィスを横切っていく2人を遠目に観察する。
くせ毛気味のボブカットに小さくて華奢な体型。
あたしとは正反対の、柔らかい雰囲気。
その彼女と言葉を交わしながら歩く、小瀧の表情。
「梁さん、こっちっす。どうぞ」
ねえ、なんて目で、その人のことを見るの。
そんな 眩しそうな目で。
ああ。
小瀧。
あたし、あんたのそんな顔、見たくなんてなかったのよ。
・
自分の気持ちに、気がついた時にはもう遅かった。
小瀧と彼女の関係性がこれからどうなっていくのかなんてわからない。
でも、確信している。
もう遅いのよ。きっと。
なんてバカなの。
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作者名：Lucio | 作成日時：2019年6月9日 14時
