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会社に戻ると、すっかり人のいなくなったフロアで、望がひとり机に向かっていた。
「よーっす。
望お疲れさん〜〜」
「濱ちゃん、異動したのに、やたら毎日会ってる感じすんな」
「別にええやんけ!なにがいらんねんw」
福岡土産のお菓子を渡すと、その場で開けて食べ始めた。
「一人で残業かい。なんの仕事なん」
「今度、アルコで新聞広告だすことになって、企画会社に送るラフ描いてんねん。」
新聞広告のサイズは、記事一段分の小さなスペースから、全段と呼ばれる大きなものまである。
今望が描いているのは1段分の小さなもの。
小さめの広告スペースやから、新人の望がやってんねやろな。
「大変やなー。がんばれよ」
「俺なんか梁さんに比べたら全然やで!
夜の11時半とかにメール来てることあったし…」
「ほんま…頑張り屋さんやからなあ」
お菓子の包みをくしゃりとつぶした望が、ぼんやりと、それでもしっかりとした語気で語り出す。
「濱ちゃんは、梁さんに引っ張ってもらえって言うとったけど…
やっぱ、それだけの関係じゃイヤやねん。
いっつもがんばってる梁さんの、力になりたいねん。」
「そっか…」
「なんて、ばんばん仕事振って負担増やしとる俺が言うなって話やな…
せめて、ちょっとでも言いたいこと言えたり、元気付けてあげたりできたらええんやけど。」
ま!これからやな!と言ってぐっと伸びをする望。
「うん…望なら、大丈夫やて。」
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「もうこんな時間か〜…小瀧さんにこれだけメールして、今日はもう終わろうかな」
とっくに終電も行ってしまい、他のメンバーも家路についた。
わたしは明日初校を上げる予定の、meanのボトル類の作業に追われていた。
「…こんな時間にメール送ったら当てつけみたいかな…」
メールは明日朝イチで送ることにして、PCの電源をおとした。
書庫兼仮眠室で寝支度をする。
社泊もすっかり慣れてしまい、すこし悲しい。
「おやすみ〜……」
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夢を見た
専門学生時代の、キャンパスの記憶。
学園祭が執り行われていたあの日だ。
頰にあたる、リノリウムの冷たい床
遠くに聞こえるお祭りの喧騒
屋台からくる煙のにおい
優しく頭をなでる 手のひらの感触
眠たくて、まぶたを開けられない
あなたは誰?
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作者名:Lucio | 作成日時:2019年6月9日 14時