第14話 ページ46
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あれから、捨て案を含む4種のラフを西緋さんに送り、なんとか社長さんにFIXするところまでこぎつけた。
デザイン案を一つに絞り、明日は初校を提出する日。
小瀧さんから依頼が来て、わずか三日目のことだ。
校了まで一気に畳み掛けるため、今日も今日とて残業である。
__カタカタカタ……
しげちゃんと廉くんはわたしのかわりに納品に行ってくれていて不在、
淳太さんは徹夜続きだったので別室で仮眠中だ。
わたしひとり分の作業音が響き渡る。
「__あ、藤井さんの写真どうなったかな」
広告に乗せるタレントさんの写真は、基本的には事務所にOKをもらってから使用することになっている。
事務所の返事が気になって、小瀧さんにメールを打つ。
“写真の件、マネージャーさんから回答ありましたでしょうか?”
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「そんなん本人に直接きいたらええやん。
ここにおるんやし。」
「………」
わたしのモニタを見ながらそんな返事をしたのは、小瀧さんでも勿論マネージャーさんでもなく
しげちゃんの席に座る、しげちゃんではないその人。
ごった返した事務所には全く馴染まない、モデル藤井流星だ。
「しかしこの写真の俺きまってんなー
そう思わん?」
「…ソウデスネ」
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30分ほど前。
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___ブー・ブー…
「おや、電話〜」
スマホが着信を知らせる振動を感じて画面を見ると、
そこに表示されていたのは知らない番号。
なんとなく警戒しながら出てみると、
聞き覚えのある、鼻にかかったような特徴的なバリトンが耳に飛び込んできた。
『もしもーし。めだかちゃーん?』
…めだか、ではない。断じて。
「イエ、お掛け間違いです。」
『ちょーーー待ってやデザイナーさん!
俺やんわかる?流星!』
なぜ藤井流星がわたしのスマホに電話をかけてきているのか。
逡巡して、藤井さんのスマホ探しを手伝ったときのことを思い出した。
わたしの電話からは発信履歴を消去したが、向こうには着信を残したままだったのだ。
「……なんのご用でしょうか?」
『まだ会社におる?
今、きてんねんけど』
ハイ?
まさかと思い制作室を出て事務所の玄関に走り寄る。
ガラスのドア越しに立っていたのは、スマホを耳に当てた藤井流星その人ではないか。
「おつかれー。いーれーて。」
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作者名:Lucio | 作成日時:2019年6月9日 14時