2話 ページ4
健太side
ショッピングモールのステージで、新作の手品を披露する。
たくさんの人が足を止めて見てくれて、手品が成功するとわあっと拍手が巻き起こった。
いつもなら「嬉しい」でいっぱいの頭の中だけど、今は違う。
和馬くんが自我を失ってから、世界一クラブは集まっていない。
生徒会の仕事でぼくや光一は出入りするけど、その他には全く使われなくなった。
みんなすごく落ち込んで、どんなに励まし合っても心が晴れない。
ぼくらの繋がりに、霧がかかり始めたようだった。
特に、光一の落ち込みようは著しい。
何かに誘っても頼み事をしても、
「ごめん、忙しいんだ」「気が向かなくて」「また今度、行こう」
そんな言葉ばっかり。
それで暇を持て余しているわけでもなく、光一は時間の許す限りに和馬くんの病室に出向いていた。会話すらできない、和馬くんに会いに行っていたんだ。
いつしか、ぼくらの関係は希薄になっていた。
ー
「ねえ、光一。最近寝てないでしょ？目の下、クマができてるよ…。今日くらい、一緒にどこか行こう？」
階段でそう話しかけると、光一はゆるりとこちらを見る。
軽く微笑んで、予想通りの言葉を発した。
「まあ、ちょっと寝不足…ありがとうな、心配してくれて。でも、今日は疲れてるから…」
「光一、ひとりで考えすぎだよ。最近、ぼくたち光一と居られなくて寂しいんだ。きっと、和馬くんのことで思いつめすぎてるよ。あれは、光一だけが悪い訳じゃ」
「じゃあ健太は、和馬がいなくなっても平気でいられるんだな」
ぼくの言葉を遮って、光一の冷たい声が飛んできた。
少しカチンときて、思わず言い返す。
「ち、違うよ！光一がひとりで考えすぎてるの！ぼくたちだって心配してるよ、和馬くんにだって戻って来て欲しいんだ！でも、一緒にいられるはずの光一といられないのを、寂しいと思うのは当然でしょ！！」
一息に言い切って、荒く息をする。
怒鳴っちゃった。こんなに強く言うことなかったのに。
一拍おいて、光一が背を向けて階段を降り出した。
「そうか、ありがとう。ただ、おれが弱いだけなんだ。健太は、優しいよな」
一度も振り返らない光一を見送ったぼくは、何も言うことができなかった。
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りんご◎ - 面白いので、更新頑張ってください (2022年8月9日 12時) (
レス) id: 088b936db2 (このIDを非表示/違反報告)
たまご - 九十九夜瑠さん» ありがとうございますぅ！ (2022年5月6日 17時) (レス) id: 28ca9da869 (このIDを非表示/違反報告)
九十九夜瑠(プロフ) - プロローグのつかみが凄く上手ですね！面白かったです。イベント参加ありがとうございましたm(_ _)m続き楽しみにしてます！ (2022年5月5日 20時) (レス) id: 569fd15754 (このIDを非表示/違反報告)
春桜 - 自我が無い＝人形 ってこと？なにそれ、大好き。無理。ﾀﾋぬ。てか光一、大丈夫かな…。あと、凄く泣けそう。画面前で泣きそうだった…(x_x) (2022年5月4日 18時) (レス) @page3 id: 45a95b1035 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 泣かせに来てるんですか?泣かせに来てるんですね分かります。ありがどうござびます(半泣き) (2022年5月1日 21時) (レス) @page1 id: a725f7a9a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/suikahqd/
作成日時：2022年5月1日 17時
