四十二話 ページ45
(……ダメだ。完全に
リントさんとルイくんと
はぐれちゃった)
そこかしこで楽しそうな談笑の花が咲く
舞踏会場。
一人でうろうろしているのなんて、
私くらいだった。
(もしかしたら学院長がいるかもって、
よそ見なんかしてたから……)
そもそもよく考えると、フードを
かぶっている姿しか知らないのだ。
こんな人が多い場で、簡単に見つけられる
わけがない……。
(まずはリントさんと合流して、謝ろう。
せっかくエスコートしてくれてたのに……。
ルイくんも人が苦手みたいだし、
リントさんと一緒にいてくれてると
いいんだけど……)
周囲を見回すけれど、色とりどりの
ドレスに目がチカチカした。
(こういう時、スマホが使えれば
便利なんだけどな。
この世界には魔法があるから、科学は
発達しなかったのかな……？)
魔力を持たない私にとっては、不便で
心細い世界だった。
廊下に出て探してみようと扉を開けた
＿＿＿＿その時。
？「＿＿っ」
マユ「ッ……！」
ぶつかってしまった人が、転ばないようにと
肩を抱きとめてくれた。
慣れないドレスの裾が気になって
うつ向いていた私が悪いのに。
マユ「すみません……っ」
トア「お前……」
マユ「トアさん！」
トア「……一人なのか？
リントやルイはどうした？」
マユ「それが、会場に入ってすぐに
はぐれてしまって」
トア「………」
(この顔は……)
『頭が悪い』とか『余計なことして』とか
思っていそうだ。
どうやら考えは当たったようで、
トアさんは背を向けて歩き出してしまう。
(行っちゃう……。せっかく知ってる人に
会えたのに)
トア「＿＿何をしてる。さっさと来い」
マユ「えっ……？」
トア「舞踏会参加者を何人だと思ってる。
闇雲に探し回るなんて、時間の無駄だ」
マユ「それは……トアさんも一緒に
二人を探してくれるってことですか？」
トア「………」
不機嫌そうに進んだ分を戻ってきた
トアさんは、
マユ「あ……」
無言で私の手をとって歩き出した。
マユ「あの……？」
トア「慣れない服装で歩き回れるほど、
自分を完璧な淑女だとでも
思ってるのか」
(……つまり『ドレスが危なっかしくて
転びそうだから、エスコートしてやる？』)
間違ってない気がする。
だって今、すごくゆっくり歩いて
くれているから。
トア「…………なんだ、その
ニヤけた顔は」
マユ「いえ、ありがとうございます」
トア「………」
(昨日も思ったけど、やっぱり
トアさんて、紳士だ)
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