三十五話 ページ38
振り返ると、綺麗な青い
双眸が不機嫌を隠さず
私たちを見据えた。
それにより、ルイくんは怯えたのか
私の後ろに隠れてしまった。
戸惑いつつも少年相手なので、
柔らかい表情と声を意識して返事をする。
マユ「私ですか？」
？「お前ら、何者なんだ。
主は今まで女など気にかけたことなんか
無かったんだぞ」
マユ「主？あなた、誰かの従者さん？」
？「いかにも。
俺はトア・キフェルの従者だ」
(トアさんの……)
？「ジャスパーさんから聞いたぞ。
転入生らしいな。
王族でもないのに主の目に留まるなど、
ありえない。
力がすごいのかと思えばＣランクだし、
一体どういうことなんだ」
(なんか……怒ってる？)
けれど “ ぷんすか ” という表現が
似合うような敵意に、嫌な威圧感はなかった。
マユ「あなたは＿＿」
？「ぐえ……っ」
(！)
背後に現れたトアさんは、少年の
襟元をグイッと捕まえた。
？「なっ、何すんだ！？」
トア「それは俺の台詞だ、ナイト」
(わあ……こちらも怒っていらっしゃる)
少しも “ ぷんすか ” じゃない
その迫力に、少年もサーッと青くなる。
すると、後ろに隠れていたルイくんが
トアさんを見ると少年以上に顔を青くして
私の服を掴む力を強めた。
トア「勝手なことはするなといつも
言ってるだろう」
ナイト「だ、だってよぉ……」
トア「言い訳はいらない。その頭の中は
空洞にでもなっているのか？」
ナイト「グルゥ……」
動物が呻(うめ)くような声を漏らして
少年は大人しくなった。
トアさんの手がやっと彼の襟元から離れる。
トア「……」
(わっ、怒りの矛先が私に……っ)
トア「こいつに、何か言ったのか？」
マユ「いえいえ！何も！」
ルナ【ボク達ダッテ何モ言ッテナイカラネ！】
ルーン【言ッテナイ、言ッテナイ！】
トア「それで良い。余計な行動はするな。
＿＿＿お前たち、リントと
舞踏会に出るのか？」
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