八話 ページ11
ルイさん達が上がって、
今度は私がお風呂に入る。
一人になった途端、私はその場にへなへなと
しゃがみこむ。
(あの猫……本当にショコラかも？)
私の名前も、朝風呂が好きなことも
知っていた。
現実逃避のために首を軽く横に振りながら、
自分の頬をつねってみる。
(……痛い)
ということはやっぱり夢じゃない。
(だとしたらここは……)
「ここはキミが元いた世界とは違う。
＿＿ “ 魔界 ” なのです」
マユ「魔界……」
強い疑心を吐き出すように呟いて、
何気なく視線を持ち上げた。
マユ「＿＿！」
鏡に映った自分の姿に驚く。
(目の色が、赤い……っ)
深いワインレッドの瞳。
混乱しつつも脳裏をよぎったのは、
昨夜見た月と＿＿
(私にキスしてきた男と、同じ色……？)
更に首元には枷のように思える
チョーカーが。
両眼と同じ色の石がはめ込まれていた。
「それは、キミを助けるためのものです」
魔界とか、使い魔とかこの変な
チョーカーとか。
何もかも意味が分からない。
………分かりたくない。
(この妙な瞳も、きっとあの人が
やったんだ……)
とにかく、彼と話をしなくては。
バスルームに用意されていた、膝下丈の
ワンピースに袖を通して外に出る。
(こういう服ってあんまり着たことないな。
レトロ……いや、クラシカル風？)
そこで視線を移すと、お人形が
私を見ながら小声で「シーッ！」と言った。
(＿＿＿あ、猫……寝てる？)
穏やかなその寝顔は、どこから
どう見てもショコラで……
(出掛ける前に起こすと、いつも
ちょっと寂しそうに欠伸するんだよね。
………とりあえず、一人で
あの人を探しに行こう)
マユ「あの、ルイさん」
ルーン【ルイガ、サン付ケハ嫌ッテ
言ッテルカラ、別ノ呼ビ方ニシテアゲテ！】
マユ「えっ……じ、じゃあ……
ルイくん…？」
ルナ【ルイハ女ノ子ダケド……
マァ、ソレデ良イヨ！】
マユ「えっ！？ご、ごめんなさい！
名前がそれっぽいから……つい…」
ルーン【ルイモ良イッテ言ッテルシ、
気ニシナクテ良インジャナイ？】
マユ「そ、そっか……」
ルナ【デ、ドウシタノ？】
マユ「あっ、そうだ…」
私は三人に人探しをしてくると伝え、
部屋から出た。
(……)
(ルイ、着イテ行クノ？)
(……うん)
(ソウ言エバ、アノ人モ赤カッタネ！)
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