桜の下で待ち合わせよう5 ページ43
A「占い師って…めちゃくちゃ胡散臭いんですけど…」
疑うように顔を顰めるAちゃんに、俺はくすりと笑う。その顔は大人になった姿と何ら変わりが無かった。
及川「じゃあ、今からキミのことを当ててあげよう」
ことんと首を傾げるAちゃんの傍へと歩み寄ると、彼女と同じようにして手すりに背を預けた。
及川「本当はキミ、口悪いでしょ」
ズバリと言わんばかりに人差し指を立てながら言うと、Aちゃんはピクリと肩を揺らした。
及川「常に自分のことより周りを優先するよね。その場の雰囲気が悪くなることより、自分の意志を飲むことを選ぶ」
幼いAちゃんの瞳を見つめながら言葉を紡いでいると、まるで映画のワンシーンのようにずっと見てきた彼女の姿が胸の中を横切って行った。
及川「負担を掛けたくないから誰にも弱音を吐かない。全部自分で何とかしようとする。泣きたい時程笑ってその場を誤魔化して、抱え込む。…それで、キャパオーバーして自爆する」
キミは優しすぎるゆえに、誰かを守ることには強くても、自分を守ることには慣れていないから傷付くことが多い。
それでいて、真っ直ぐすぎるから、逃げることを知らない。
…いや、逃げずに受け止めようとしちゃうんだよね。
Aちゃんはもう笑顔を浮かべることができずに、狼狽を顔に漂わせていた。余裕無く。
及川「本当のキミは毎日つまらないって、自由になりたいって思ってる。…どう?違う?」
居心地悪そうにAちゃんは顔ごと視線を伏せる。
今のAちゃんはまだ中学生で、自分に何ができるのか見当もついていない。必死で自分を形作ろうと足掻いている、その最中。
A「…どうして分かんの?」
足元に視線を落としたまま、Aちゃんは俺に問いかけてきた。
敬語の剥がれたAちゃんに、俺はまた小さく微笑む。他人行儀さが無くなったようで嬉しかった。
及川「似ている子を見てきたんだ」
A「…それ、占い師じゃないじゃん」
及川「でも、俺はキミのことが分かる。未来の姿だって見えるよ。…知りたい?」
Aちゃんは顔をあげると、即座にぶんぶんと首を横に振った。
A「どうでもいい。どーせつまんない人間になってるし」
及川「どうかなぁ」
A「…だって私、何にもないもん」
ぽつり。独り言とも思える口調。俺を見上げるAちゃんは寂しそうで、追い詰められた表情を浮かべていた。
A「空っぽだから」
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スナック杏月(プロフ) - ゆんさん» ゆんさんいつもコメントありがとうございます!そして最後まで見届けて頂き本当に励みになりました!私もほっとしたような寂しいような心境です😢国見ちゃん×後輩ちゃん話でも最後まで飽きずに着いてきて頂けるようなお話を丁寧に綴っていけたらと思います🥰 (2023年1月28日 0時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - あぁぁ😭ついに一番好きなシリーズが完結してしまった😭💕嬉しいような寂しいような、、、でも次の国見ちゃんの話を楽しみに生きていきます🥺 (2023年1月27日 0時) (レス) id: d0dd043faf (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - なぅさん» 遅れあけましておめでとう!今年はまったりと執筆していくので気長にお付き合いよろしくね🥲 (2023年1月12日 12時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
なぅ(プロフ) - 𝐻𝑎𝑝𝑝𝑦 𝑁𝑒𝑤 𝑌𝑒𝑎𝑟☆占い師及川愛す𝐟𝐨𝐫𝐞𝐯𝐞𝐫☆ (2023年1月2日 1時) (レス) @page43 id: 061659d46e (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - おもちさん» おもちさんお久しぶりです!私も長らく占ツクを離れており、最近執筆再開をしました😢おかえりなさい!素敵な作品が多い中最初に開いてくれて嬉しいです😭温めてきた二人のお話を最後まで丁寧に綴っていきますので最後までお見届けよろしくお願いします! (2022年12月24日 2時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2022年4月7日 1時