桜の下で待ち合わせよう3 ページ41
A「大丈夫ですか?」
Aちゃんは、気遣うように俺の顔を覗き込む。幼いその目は真っ赤で、涙でキラキラと光っていた。
自分はさっき泣きじゃくっていたのに、こうやって人のことを心配する優しいAちゃんに、胸の内で嘆息する。
この子は本物のAちゃんだ。誰よりも優しくて温かい心を持った、俺が惚れた女の子。
“Aちゃんの方こそ“…という言葉は喉の奥に押し込む。
今目の前にいるAちゃんにとって俺は赤の他人。名前を呼んだら怪しまれてしまう。
及川「…キミの方こそ大丈夫?」
A「私?」
及川「その、さっき泣いてたみたいだから」
Aちゃんは、はっとした顔を浮かべて、手の甲でゴシゴシと目元を擦る。それからすぐ誤魔化すようにしてへらりと笑った。
A「おじさんが急に現れたお陰で引っ込みました」
及川「お、おじさん……?」
A「…で、今更なんですけど、おじさんって変質者じゃないですよね?」
二度目のおじさん呼びをして俺にダメージを与えたAちゃんは、少し疑うようなジト目を俺に向けた。
A「先生ではないですよね?用務員さんにしても見かけない顔だし…」
及川「えぇっと……そう!用務員なの!まだ新人の!」
A「ほんとに?」
及川「ほんとほんと!」
A「…ふぅん。何か嘘っぽいけど、まぁいっか。おじさん悪い人じゃなさそーだし」
Aちゃんはにっこりと穏やかに笑った後、ああそうだと何かを思い出したような顔を浮かべた。
A「…あの、ここに入ったこと、先生達には内緒にしててもらえますか?」
及川「え?」
A「ここ立ち入り禁止なんですよ。私、一応優等生で通ってるんで、カギパクって内緒で入ってんのバレたらまずいんです」
及川「…ああ、大丈夫。安心して」
俺の答えに、良かったとAちゃんはほっと胸を撫で下ろして安堵の表情を浮かべた。
ーーこの子は、高校の頃のAちゃんじゃない。あの頃、部室で泣きながら打ち明けてくれた、“いい子“だった時のAちゃんだ。
思い詰める度に、こうしてAちゃんは誰にも悟られまいとここへやって来て、隠れて泣いてきたのか。
…寄り添ってあげたい。
でも、俺が行動することで未来が変わっちゃって、Aちゃんと出逢えなくなったらどうしよう。…そう、思うのに。
及川「ねえ、良かったらどうして泣いてたのか教えてくれる?」
ーー俺は、大好きなキミを放ってはおけなかった。
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スナック杏月(プロフ) - ゆんさん» ゆんさんいつもコメントありがとうございます!そして最後まで見届けて頂き本当に励みになりました!私もほっとしたような寂しいような心境です😢国見ちゃん×後輩ちゃん話でも最後まで飽きずに着いてきて頂けるようなお話を丁寧に綴っていけたらと思います🥰 (2023年1月28日 0時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - あぁぁ😭ついに一番好きなシリーズが完結してしまった😭💕嬉しいような寂しいような、、、でも次の国見ちゃんの話を楽しみに生きていきます🥺 (2023年1月27日 0時) (レス) id: d0dd043faf (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - なぅさん» 遅れあけましておめでとう!今年はまったりと執筆していくので気長にお付き合いよろしくね🥲 (2023年1月12日 12時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
なぅ(プロフ) - 𝐻𝑎𝑝𝑝𝑦 𝑁𝑒𝑤 𝑌𝑒𝑎𝑟☆占い師及川愛す𝐟𝐨𝐫𝐞𝐯𝐞𝐫☆ (2023年1月2日 1時) (レス) @page43 id: 061659d46e (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - おもちさん» おもちさんお久しぶりです!私も長らく占ツクを離れており、最近執筆再開をしました😢おかえりなさい!素敵な作品が多い中最初に開いてくれて嬉しいです😭温めてきた二人のお話を最後まで丁寧に綴っていきますので最後までお見届けよろしくお願いします! (2022年12月24日 2時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2022年4月7日 1時