【及川徹】0キロメートルの愛 2nd【番外編】

太陽のふるさと２７ ページ37

岩泉｢寝たな｣


徹の膝の上、向かい合わせで身体をぴったりとくっ付けて眠るレイを見て、岩泉は小さく笑う。

ーー三人が戻って来た時は、びっくりした。真夜ちゃんは国見ちゃんにお姫様抱っこされているし、レイは泣き跡くっきりで両膝怪我してるし。


A｢…真夜ちゃん、本当にごめんね｣

真夜｢そんなに何度も謝らないでください。私がレイくんと遊ぶのが楽しくて夢中になっちゃっただけで…｣


怖い思いさせちゃってごめんね。
真夜ちゃんは、徹に抱かれて気持ち良さそうに寝息を立てるレイを見つめて、そっと呟く。それから、私に顔を向けて微笑んだ。


真夜｢レイくん偉かったです。怖くて固まって泣いちゃうことしかできないと思うのに、咄嗟の行動で英のこと呼びに行ってくれて……A先輩に見えちゃいました｣

A｢え…？｣

真夜｢私の傍を離れる時にレイくん言ったんです。“大丈夫だからね”って、小さな手で私の手を握ってくれて、不謹慎にも嬉しくなっちゃいました。……その、私を助けてくれたA先輩とあまりにそっくりで｣


真夜ちゃんは大切な想い出をそっとなぞるように優しく目を細める。


真夜｢レイくんのこと、優しくて暖かい子に育てましたね｣


どくん、と胸が大きく高鳴る。ずっと私を見てきてくれた真夜ちゃんのそのひと言に、心を打たれずにはいられなかった。


A｢へへ、小児科の先生に褒められちゃったらもう鼻高々だ………｣


言葉の途中、胸がじいんと熱くなり、涙ぐむ。

ーーこうして真夜ちゃんと、みんなと会うと、懐かしく愛おしいあの日々に引き戻される。

青城を卒業して、上京して外大に通って、卒業後はアルゼンチンへと渡って社会人になって、結婚して、妊娠して、出産して。もうバカやってた子供じゃないのに、大好きなみんなの前だと子供に戻ってしまう。

ぽろり。胸を突き上げてくる気持ちで闇雲に涙が溢れてきて、慌てて手の甲で頬を拭った。

何も言わずに真夜ちゃんは私にハンカチを差し出し、徹は私の背に手を当てて宥めるように摩ってくれて、それが余計に私の涙を誘う。


A｢わたし…優柔不断の八方美人…じゃん…？｣

花巻・松川｢｢美人ではない｣｣

真夜｢黙っててください｣

及川｢いや、Aちゃんは可愛い系だから。八方可愛いだから｣

真夜｢黙れ｣

国見｢…飲み物切らした。自販機行ってくる｣

金田一｢このタイミングで席立とうとすんな！！｣

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