【及川徹落ち】18000キロメートルの恋 2nd【黒尾鉄朗】

ムラッとした ページ31

▲▼黒尾 side


黒尾｢押し倒すなんて大胆だな…｣

A｢ふざけてる場合か！！｣


俺の上に覆いかぶさっているAは少しだけ頭を起こして、怯えたように目をあちこちに飛ばす。


A｢ねぇどこ行った…？また見失ったんだけど…｣


首周りが広いTシャツの襟元から、ちらりと胸元がこんにちはしていて、つい目を奪われた。

こいつ…ノーブラかよ。
色気のねぇジャージ着てるくせに谷間見せてんじゃねぇよ。


A｢聞いてんの黒尾？｣


Aは俺に顔を近づけて尋ねてきて、今度はそのAの唇に目を奪われた。

いつだったか、こいつが熱を出して倒れた時に理性が切れて何度もキスをしたことを思い出す。

柔らかい唇の感触や温度、自然と漏れる熱い吐息。

こんな状況だというのに、思い出してムラッとした。

…どさくさに紛れてキスしてやろうか。

そう思ってAの腰に手を回して抱き寄せる。
ぐっと近くなったその唇に口付けようとしたその時ーー、

俺達の上を飛んだ。
ゴキブリが。


A｢ぎゃああああ！！｣


ゴンッ！！


黒尾｢っ！！｣


Aが頭突きをかましてきた。俺の顔面に。
鼻に激痛が走って、目の前がチカチカとした。


黒尾｢…いってぇ、｣

A｢あっ、黒尾！鼻血が！！｣


Aがギョッとしてそう言って、自分の鼻を触った。
ぬるりと濡れる感触。手を見ると赤くなっていた。


A｢ごめん黒尾！大丈夫！？｣

黒尾｢…大丈夫。…ちょっと降りろお前｣


Aが俺の上から降りると、鼻をつまんでふらりと立ち上がった。
床に転がった殺虫スプレーを拾い上げて、ゴキブリを睨みつけた。

…許せねぇ。邪魔しやがって。

怒りをぶつけるようにして、スプレーをぶっかけた。


黒尾｢A。お前何でもするって言ってたよな？｣


ゴキブリが動かなくなったのを確認すると、鼻をつまんだままAに尋ねた。


A｢え？うん、言った…と思う｣


Aはティッシュ箱を胸に抱えて、それを何枚か引き出して俺に渡しながら曖昧に頷いた。


黒尾｢俺とデートしてくんない？｣

A｢えっ｣

黒尾｢…拒否権ねーけど｣


ティッシュを鼻に押し当てながら、格好のつかない誘い方をする。
Aは顔をキョトンとさせていた。


A｢デート…？｣

黒尾｢いつも使ってるあの年季入った髪ゴム禁止な｣

A｢えっ｣

黒尾｢あとスカート履いてこい｣

A｢えっ｣

黒尾｢メイクも｣

A｢…注文多くね？｣

今日は俺のだから貸しません→←お前が応答しろ

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