【及川徹落ち】18000キロメートルの恋 2nd【黒尾鉄朗】

貴方が欠けているんだ ページ11

A｢じゃあ先生またね！｣

元担任｢またいつでも来い｣


もう少し校内を歩いて回りたかった。
けど、バレー部は今日午前中だけの活動で、真夜ちゃんも生徒会のお仕事が終わったようで、お腹を空かせた可愛い後輩達を思い、青城を後にした。


A｢そっかー、真夜ちゃん生徒会長頑張ってるんだねぇ、よしよし｣

真夜｢えへへ｣

国見｢キモ｣

真夜｢うるせぇ喋んな｣

岩泉｢金田一はどうだ？｣

金田一｢…何とかやってます｣


現在主将の金田一は遠い目をして頷くと、ちら、と横目に国見ちゃんを見つめた。


金田一｢こいつ手抜けるとこはとことん手抜いてて…そんでそのしわ寄せが俺に…。国見、いざという時は頼りになるんすけど…｣

岩泉｢苦労してんな金田一…｣

真夜｢アンタ金田一困らせるのやめなよ。副主将なら副主将としての責任感を、｣

国見｢うるせーな。説教ババアかよお前は｣

真夜｢はあ！？｣

花巻｢ホントお前ら言い合いしかしてねーよな｣

松川｢つーか、これがこいつらの日常な｣

金田一｢そういやお前ら三年間同じクラスだったよな。すげーな｣

国見｢不本意にもな｣

真夜｢それはこっちの台詞だから｣

A｢ふはっ…、｣


目の前で繰り広げられるみんなの会話に思わず笑ってしまった。

楽しくて、懐かしくて。


岩泉｢どーした？｣

A｢ふふっ…楽しいなーって！｣


私の言葉に、伝染するようにみんなも笑みを浮かべた。
きっとみんなも同じ気持ちでいてくれてるんだろうな。

こうして歩いていると、高校生に戻ったみたいだ。

あれから二年経って少し大人に近づいて、それぞれの生活を送る私達だけど、久しぶりに集まっても、こうしてあの日々と変わらずに笑い合えることが嬉しかった。

…でも、少しズキッと胸が痛い。

それはきっと、

足を止めて、隣を見つめる。
誰もいない、そこを。

目を瞑る。
いつも私の隣で、柔らかく微笑んでいた徹を思い浮かべた。


花巻｢おーい、何してんのー？｣

松川｢置いてくぞー｣

A｢あ、待ってー！｣


目を開けるとみんなは大分先を歩いていて、慌てて追いかけた。

…一人だけが足りない。

欠けているんだ。
徹が。徹だけがここにいない。

その現実に胸がきゅっと締め付けられて、苦しかった。

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