【青葉城西】及川さんとこの妹ちゃんは笑わない。2nd

ただいまとおかえり ページ47

及川｢は〜あ…せっかくお兄ちゃんが憎まれ役を買って出ようと一肌脱いだのに、この烏野の単純バカコンビはさ〜…｣


ネットの向こう側にいる西谷先輩と田中さんが、カッチーン☆と言っているのが聞こえた。

口でカッチーンって言ってる人初めて見た…。


花巻｢こらマネージャー｣


ぼーっと突っ立っていると、花巻先輩が私の頭をこつんと小突いてきて、わっと声を出す。


花巻｢俺らになんか言うことないのー？｣

A｢…え、えっと、｣


花巻先輩に言われて周りに目を向ける。

あの事件以来、みんなに過去を知られてしまったのが怖くて、避けていた。

そんな私を放って置くことの方が楽で簡単だったはずなのに、私を追いかけてきてくれた。

熱くなる胸の前でギュッと手を握り、それから頭を下げた。


A｢…誠に、申し訳ございませんでした｣

岩泉｢社会人か｣

松川｢土下座付きでもう一回やり直し｣

岩泉｢させんな。そんでAもやろうとすんな｣


岩ちゃんキレキレのツッコミを聞くのも久しぶりに感じる。

たった今座りこもうとしていた膝を立てて立ち上がると、もう一度みんなの顔を見つめる。

自然と顔が緩んでいく。
笑いかけながら、私は言った。


A｢…ありがとう｣


みんなの顔は一瞬惚けて、それから私と同じようにして笑った。


国見｢…おかえり｣


思わぬ人物からの思わぬ一言。
これには言われた私だけではなく、みんなも驚いていた。

みんなで顔を見合わせて、それからぷっと吹き出した。


国見｢何笑ってんだよ｣

A｢…っ、だって国見らしくなくて｣

金田一｢こいつお前のことになるとホント人が変わるよな〜。今日こうなったのも国見が及川さんに“及川さん…このままにしとくつもりですか？”って言い出して、｣

国見｢うるせーらっきょ｣

金田一｢いてっ！蹴んなよ！｣


モノマネをする金田一のお尻を、国見が足蹴にする。
国見のその耳は恥ずかしそうに真っ赤に染まっていて、私はまたぷっと吹き出した。


A｢国見、ありがとう｣


国見は…優しい。

面倒くさそうに、どうでもよさそうな顔をしながらも私をいつも気にかけてた。

以前ストーカーだった森崎さんに追われて南棟の空き教室に逃げ込んだとき、走って私のところまで飛んできてくれた。

震えながら私を抱きしめてきた国見の体温、まだずっと覚えてる。


A｢ただいま｣


笑いかけると、国見は照れくさそうにそっぽを向いて、うんとだけ答えた。

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