【青葉城西】及川さんとこの妹ちゃんは笑わない。2nd

全部見せて ページ36

国見 side


Aが部活に来なくなった。

目が、あまり合わなくなった。
話す回数が減った。

俺を、俺らを避けているのは明らかだった。


国見「課題見せて」

A「ん」


いつもの、またやってないの？という呆れた声は返ってこない。
顔も見ずに素っ気なくノートを渡された。

Aは昼休みも、何かと理由を付けてどこかに消える。

今までの距離感が嘘のように、ただのクラスメイトとして接される。


国見「…ねぇ、いつまで部活サボる気？」

A「………」


Aは無言で席を立って、教室を出て行こうとする。
俺も席を立ち、すぐに後を追った。

廊下を抜け、人気の少ないところまでやってくると、Aが足を止めた。


A「…ついてこないで」


振り返ることなく、Aは言った。


国見「じゃあ逃げるなよ」

A「逃げてなんか、」

国見「逃げてるよ。何をそんな気にしてんの？」


尋ねると、Aは視線を床に落とした。


A「…知られたくなかった。だからもう、バレー部には戻れない」


…あ。今、綻びが見えた。

Aはいつもみたいに強がることなく、震える声で絞り出した。
俺に隙を見せた。


国見「…どうしてそんな考えに行き着くんだよ」


俺はAの肩を掴んでこっちを向かせる。

Aは泣いていた。
初めて俺の前で涙を流していた。


A「恥ずかしい。情けない。苦しい。悲しい。憎い。…そういうの全部、閉じ込めてずっと見ないように、誰からも見られないように隠していたかった…」


…そうか。俺達にどう思われるのかが怖くて、避けているんだ。

そんな必要なんかないのに。
Aのことを受け入れないわけがないのに。

森崎さんのときだってそうだ。

いっつも一人で抱え込んで、一人で解決しようとして、頼ったり甘えたりするのが下手で、大事なこと程、話さない。

それでぐるぐると悩んで、自分の中だけで答えを出す。

ーー間違った答えを。


国見「…馬鹿じゃないの」

A「…え？」

国見「馬鹿すぎて呆れる」


Aの涙が引っ込んだ。

大きくため息を吐き出した後、Aの頭を軽く小突いた。


国見「他には何考えてんの？頭ん中のそれ、全部出しなよ」


Aがワケありなのは最初から気づいていた。
寄りかかってくるのをずっと待ってた。

知りたい。理解したい。

…だから、全部俺に見せて。

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