弱い自分を見せて ページ30
A「練習試合の時も思ったんですけど、烏野って面白いチームですね」
でこぼこで、ちぐはぐで、危うい。
でも不思議とバランスはとれていて。
練習を見ながら零すと、武田先生が、そうですね、と微笑んだ。
武田「例え一人では弱かったとしても、仲間と補い合うことで、きっと彼らならこれからも強くなれるはずです」
A「補い合う…、お互いの弱みを知っているってことなんですね。…でも、仲間に弱みを見せるのって、怖くないんですかね」
武田「怖い…ですか?」
A「あ…すいません。変なこと言って」
はっとして、俯く。
すると武田先生はそんな私にふんわりと笑いかけた。
武田「そんなことありませんよ。どうぞ話してください」
武田先生は話すよう促した。
武田先生独特のふわふわとしたその柔らかい雰囲気に取り込まれ、私はぽつりぽつりと話し出す。
A「えっと…自分の格好悪いところとか、ダメな部分とか…見られたくない面を人に見せて、嫌われたらどうしようとか…思わないのかなぁと」
嫌われるまではいかなかったとしても不快にしてしまったら、とか。
少なくとも私はそう思って、尻込みしてしまう。
武田「…弱い自分を見せなかったとして、その完璧な自分は、本当に自分なのでしょうか?」
A「…え、」
武田「完璧な人間なんかいません。弱い自分を見せてください。一人でも多くの人に見せてください。そのとき優しく受け止めてくれた人が貴方の本当の仲間です」
その言葉は、核心を突いた。
胸に真っ直ぐと届いて、突き刺さる。
武田先生は真剣な顔から一変、元の柔らかい笑顔を浮かべた。
武田「…って、とある教育評論家の方の言葉なんですけどね」
A「…いい言葉ですね」
…そうできたらどんなにいいか。
心の中で零して、目を伏せた。
▲▼
西谷「ほら、肉まん」
A「ありがとうございます」
帰り道、坂ノ下商店というお店で西谷先輩に肉まんを奢ってもらった。
お店の中にある椅子に向かい合わせに座り、ほかほかの肉まんを一口かじる。
西谷「…で、どうした?何かあったんだろ?」
A「…ちょっと顔見たくなっただけで、」
西谷「この強がり!」
A「んがっ、」
鼻をつままれて変な声が出た。
西谷先輩は、嘘つくなよ、と言いながら勢いよく私の鼻をぱちんと離す。
西谷「ほんっっと、頼ったり甘えたりすんの苦手だよな!…中学んときも俺のこと頼ってくれなかったしよー…」
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いちご(プロフ) - 杏月さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2021年4月13日 22時) (レス) id: 0357050ae1 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - いちごさん» 遅れましたがなんとか完結致しました・・・!バレーやられてるんですね!私は運動神経悪いんで尊敬します!バレーボール頑張ってください! (2021年4月11日 21時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続きはありますでしょうか?見つけて1話から見てとっても吸い込まれるように読んで一日で読み終わってしまいました。私もバレーボールをやっていてレシーブが苦手なんですけれど読んだらなんかレシーブが練習したくなりました!大変だとは思いますが更新お願いします (2020年3月14日 0時) (レス) id: 0357050ae1 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - ありささん» コメントありがとうございます!最高だなんて嬉しいです...作者の励みになります!これからも読んで頂けると嬉しいです! (2019年8月1日 12時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - ああぁぁぁー!!!もぅ最っ高です!!!これからも更新頑張ってください!!! (2019年7月31日 22時) (レス) id: 2c7a607a36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2019年7月9日 21時