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コートを舞え ページ14

及川 side


今日も一日練習が終わり、解散する。

サーブ練をしたくて居残りしようとすると、床をモップ掛けするAが目に入った。


及川「A。ここまだ使うからモップ掛けなくていいよ」

A「うん。分かった」


頷いて隣のコートに行こうとするA。

最近のAは目まぐるしい程にいい方向に向かっている。
…そろそろ大丈夫かもしれない。

少し悩んでから、再び声を掛けて引き止めた。


A「どうしたの?」

及川「Aさ、自主練付き合ってくれない?サーブ取ってみてよ」

A「え、」


これにはAだけじゃなく、周りも驚いた反応を見せた。

固まる全員の中心で、俺だけ笑っている。


岩泉「おい…Aはまだ、」


岩ちゃんが真っ先に心配して、俺にだけ聞こえるよう小声で耳打ちをしてくる。

大丈夫だよ、とだけ返す。

本当に怖いのなら、無理だと言うはずだから。


及川「久々に付き合ってよ、A」


Aはぎゅっとモップの柄を握りしめる。
葛藤するような表情を浮かべて。

ーーボールに触りたそうにしているのを俺は知っている。

Aはバレーに対する恐怖心、喪失感を抱えている。
でも、それだけじゃない。

楽しかった。嬉しかった。好きだった。
…ううん、今でもAはバレーが好き。

ーーだから。

Aは決意するように顔をあげた。


A「…分かった」


ここがあの中学で、あのチームだったのならきっとこうは言わなかった。

青城に来て、みんなに出会って、このチームを信頼し始めたからこそだ。


及川「ありがとう」


Aはモップを体育館の壁の隅に片すと、羽織っていたジャージを脱いだ。
それから、ゆっくりとした足取りでコートの反対側へと向かい、真っ直ぐとこっちを見据える。

Aの手が、足が震えていた。

でも、目は怯えていない。
ーー凄い集中力。


及川「本気でいくからね」

A「…いつでもいいよ」


カゴからボールを取る。

充分に助走距離を取って、ボールを頭上にあげた。
勢い良く踏み切って飛び上がる。

反対コート目がけてサーブを打ち込んだ。

ーーもう一度、コートを舞え。A。

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いちご(プロフ) - 杏月さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2021年4月13日 22時) (レス) id: 0357050ae1 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - いちごさん» 遅れましたがなんとか完結致しました・・・!バレーやられてるんですね!私は運動神経悪いんで尊敬します!バレーボール頑張ってください! (2021年4月11日 21時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続きはありますでしょうか?見つけて1話から見てとっても吸い込まれるように読んで一日で読み終わってしまいました。私もバレーボールをやっていてレシーブが苦手なんですけれど読んだらなんかレシーブが練習したくなりました!大変だとは思いますが更新お願いします (2020年3月14日 0時) (レス) id: 0357050ae1 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - ありささん» コメントありがとうございます!最高だなんて嬉しいです...作者の励みになります!これからも読んで頂けると嬉しいです! (2019年8月1日 12時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - ああぁぁぁー!!!もぅ最っ高です!!!これからも更新頑張ってください!!! (2019年7月31日 22時) (レス) id: 2c7a607a36 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2019年7月9日 21時

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