【青葉城西】及川さんとこの妹ちゃんは笑わない。2nd

ごめん ページ1

怖くて、振り返らずに前だけを見て走り続けた。
追いかけられてるのかも分からなかった。

倉庫と化している空き教室に逃げ込み、乱れる息を整える。
教室の端っこに膝を抱えて蹲った。

…どうしよう。
あの人、私を探しているかな。
みんなのところに行きたいけど、出て行ったら見つかるかもしれない。

手が、足が、がくがくと情けなく震える。
怖くてもう、一歩も動けない。

自分の膝に顔を埋めたその時、ポケットに入っていたスマホが鳴って、心臓が身体ごとびくりと跳ねた。

ゆっくりとスマホを出して見ると、国見からの電話だった。

電話に出ようと試みるが、指先が震えて上手くタップできない。
何度も何度も触って、やっとの思いで電話に出た。


国見『A…！』

A「…っ、」


国見の焦ったような声が電話口から聞こえた。

咄嗟に声が出なかった。
私の声が聞こえず、国見は更に焦って何度も私の名前を呼ぶ。


A「くにみ…、」

国見『A…お前今どこに、』

A「南棟の3階の空き教室…」

国見『分かった。すぐ行く』


電話口で雑音が入って、国見が走っているのが伝わってきた。


国見『…電話、繋いだままにしとくから』


電話を切ると私が不安になるからと分かっているからなんだろう。

国見の優しさに泣きそうになり、ぐっと下唇を噛んで堪える。


A「国見…ごめん」

国見『…何が？』

A「怒らせて、ごめん…」

国見『………』

A「国見のことが頼りないなんて私、思ってない。信用してる。だから頼るのが怖い」


何度も話そうと思った。
けど、その一歩が私にとっては重くて仕方がなくて、踏み出せずにいた。

国見は、みんなはそんな事しないって頭では分かっていても、あの時の喪失感は拭えない。

ーー信用して話して、また裏切られたら？

そう思って身動きがとれなくなるんだ。


A「私、迷惑かけて嫌われたくないんだ。結局…私は傷つくのが怖いだけ。ごめんね、国見、」


ガラッと教室のドアが開く。

血相を変えた国見の姿だった。
息を切らし、肩を上下させて、私を見て少しほっとしたような顔をする。


国見「…ごめん」


国見がゆっくりとした足取りで私に近づいてくる。
そして、国見によって私の視界が塞がれた。

苦しい程に国見に抱き寄せられ、何も見えない。

安心して、私は国見に身を任せて目を閉じた。


国見「一人にしてごめん」


私の背中に回された国見の手が震えていた。

拒否権はない→

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