【青葉城西】及川さんとこの妹ちゃんは笑わない。

もしあの手を掴んでいたら ページ23

清水「ねぇ、大丈夫？」


ドリンクを作っている私にそう声をかけてきたのは、すごく美人な烏野のマネージャーの人だった。


A「…何がですか？」

清水「腕。さっきうちの影山に掴まれてたでしょ」


腕に目をやると赤くなっていた。
大丈夫です。とひらひらと振ってみせた。


清水「ごめんね。後できつく言っとくから」

A「平気です。気にしてません。あ…うちの分ドリンク作り終わったので手伝いますよ」

清水「ありがとう。でもちゃんと影山には注意しておくから」


おお…笑うと更にビューティフル。

名前を聞くと、清水 潔子さんと言うらしい。

さっきの坊主の人が言ってた潔子さんってこの人のことか。
うん。たしかにクールビューティー。


清水「青城は人数多いし、マネージャーひとりって大変じゃない？」

A「大変な分やりがいもあります。烏野も清水先輩だけですか？」

清水「うん。来年のことを考えると後輩が入ってくれるといいんだけどね。Aちゃんみたいないい子が」


ドリンクを作る手を止める。

ーー"俺と一緒に烏野に来ないか？"

そう誘ってくれたあの人の手を掴んでいたのなら。
私は、清水先輩と違う形で出会っていた。


A「清水先輩。聞きたいことがあるんですが…」

清水「ん？」

A「西谷 夕という方は…烏野にいますか？」


清水先輩が驚くように手を止めて私を見た。


清水「…いる。けど今は部活に参加していないの」

A「え、どうして…」

清水「ちょっと色々あってね。それでどうして西谷を知ってるの？」

A「…中学のとき、お世話になった先輩なんです」

清水「そういえばさっき影山がAちゃんのこと千鳥山って…、」

A「はい。同じ千鳥山でした」

清水「もしかして……。聞いたことある名前だと思ったら、貴方がAちゃんだったのね」


清水先輩が納得したような顔をする。
そして最後のドリンクを作り終えると、


清水「Aちゃん。西谷と会う気ない？」


私にそう、尋ねた。
咄嗟に言葉が出なくて、黙り込む。

会いたい。
今日だって、会えると思って期待してた。
でも、どこかでほっとしている自分もいて。


A「私…は、」

溝口「おーい、試合始まんぞー」


溝口コーチが私達を呼びに来た。
清水先輩は、固まる私の肩を軽く叩く。


清水「行こうか」

A「はい…」


頷いて清水先輩の後を追う。

答えられなかった。
自分がどうしたいのか、分からなかった。

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