懐かない野良猫 ページ19
松川 side
A「松川先輩、仕事の邪魔です」
Aちゃんをいじるのは日課だ。
そんな俺を、いつだって表情を変えずに涼しい顔でかわす。
ただ、他の顔が見てみたかった。
おとつい、Aちゃんが倒れた。
倒れるまで無理をする程、Aちゃんは鈍い子ではない。
休みたくない理由があったからなんじゃねーのかな、なんて思った。勝手な憶測だけど。
A「おはようございます。おとついは休んでしまってすみません。また今日から頑張らせてもらいます」
朝一、Aちゃんは俺達にそう頭を下げた。
この子はどことなく、気を張っているように思う。
部員として距離は縮まったが、一定の距離は保っている感じだ。
…兄である及川と、幼なじみの岩泉は除いて。
それがなんかもやもやする。
朝練中、トイレに行った帰りにドリンクを作っているAちゃんを見かけた。
どことなくぼーっとしていて、危なっかしいなー、なんて見ていたら案の定ボトルを落としそうになっていて。
松川「ふーん。なに?恋わずらい?」
A「あながち間違ってませんね」
Aちゃんの予想外の返答に、頭がショートした。
好きな人いんの?嘘だろ?
一体どこの馬の骨だ?
A「松川先輩みたいに私のことをいじめたりしない、そりゃもう優しくてかっこよくて男らしい人です」
こんな死んだ目した子が好きになる男はどんなタイプなんだろうと思ったら、ただのパーフェクトなやつじゃねーかよ。
そいつは俺の見たことないAちゃんの違う表情を知っているんだろうなって思うと、胸の中にあったもやもやが大きくなったような気がした。
…気に入らない。
A「あ。松川先輩、待ってください」
Aちゃんが小走りに追いかけてきて、俺のシャツの裾をきゅっと引っ張った。
振り向くと思いの外近くにいて、Aちゃんの柔らかいシャンプーっぽい匂いが鼻をくすぐり、ドキリとする。
A「あの、倒れた日差し入れしてくれてありがとうございました」
そう言ったAちゃんは見たことない顔をしていた。
表情は変わらない。
目は相変わらず光がなく、曇ったまま。
けれど、纏う雰囲気が柔らかく、僅かに笑ったように見えた。
胸のもやもやが一気に晴れる。
確かに今、俺に笑った。
それが、こんなにも嬉しい…なんて。
言うなれば、ちっとも懐かない野良猫を手懐けたような感覚。
そうだ。きっとそうに違いないんだ。
…と、今は思うことにしておこう。
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杏月(プロフ) - わむさん» コメントありがとうございます。ご指摘ありがとうございます。確かにその通りですね。作者がアホでした・・・。他にもリアルとかけ離れている部分があるかと思います。不快にさせてしまったようであれば申し訳ございません・・・。 (2021年4月29日 23時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
わむ - なんで兄貴と違う中学なの?同じ住所なら学校も同じじゃん。高校や私立じゃないんだし。 (2021年4月29日 14時) (レス) id: 6836c6202c (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あ〜くさん» コメントありがとうございます。最高だなんてめちゃくちゃ嬉しいです!作者の励みになります!ノヤっさん大好きで登場させてしまいましたwwこれからも欲望の赴くままに投稿していきます!お話がいっぱいになりましたので、続編に飛んでください! (2019年7月9日 22時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あ〜く(プロフ) - すっごく面白いです!何か…語彙力が無くなって上手く言えないですけど、最高です!!逆ハーも好きなんですけど、何より私の推しであるノヤっさんとの絡みもあって凄いドキドキしながら見ています!更新頑張って下さい、応援しています!!o(>∀<*)o (2019年7月9日 20時) (レス) id: 14e5aeaf40 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 黒豆粉さん» コメントありがとうございます。作者の欲望のままに書いている作品を気に入って頂けるなんて嬉しい限りです...!これからも楽しんでもらえるよう頑張って投稿していきます! (2019年7月7日 11時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2019年6月7日 17時