【国見英】賽は遥か遠くにぶん投げる 2nd【青城】

いつも疲れてます ページ47

▲▼国見 side


A｢じゃあお願いします｣


ぐったりしている及川さんと金田一とは対照的に、Aは疲れが全く感じられない涼しい顔で、岩泉さんにバッグを託していた。

同じく岩泉さんにバッグ預けて身軽になった朝陽先輩と花巻さんは、子供のように早く行こうとAの手を引く。
元気だなこの人達…と思いながらその様子をぼーっと眺めていると、ふと、朝陽先輩と目が合った。目を逸らそうとする前に、ロックオンされる。


朝陽｢国見ちゃんは元気そうじゃん｣

国見｢…元気じゃないです。いつも疲れてます｣

朝陽｢じゃあ問題ないね！行くか！｣


晴れやかに笑う朝陽先輩にむんずと手を掴まれ、引っ張られていく。一足先にコーヒーカップの列に並んでいたAと花巻さんの元に辿り着くと、朝陽先輩は満足気に笑った。


朝陽｢これ定員4人までだからちょーどいーね！｣

A｢…べつに無理に増やそうとしなくても｣

朝陽｢ほら。私って、ギリギリでいつも生きていたい系女子だから｣

国見｢…何ですかそれ。聞いたことないんですけど｣


だって今適当に言ったんだもん。
朝陽先輩がへらりと笑ったところでアトラクションの順番が回ってきた。

真っ先に朝陽先輩が、一拍遅れて花巻さんがコーヒーカップに乗り込んでいく。早くおいでよー！と手を振る朝陽先輩に、はしゃぎすぎだとAがくすりと笑ったけど、Aだっていつもよりはしゃいでいるように見えた。

乗り込んでしばらくしてコーヒーカップが動き出すと、すぐに花巻さんがニヤリと口の端を吊り上げて笑う。そして、想定内。目の前のハンドルに手を掛けた。


花巻｢遠心力の変わらないただ一つの花巻！｣


バカなことを言いながら花巻さんが目の前のハンドルを勢い良く回し始めた。それに朝陽先輩が加勢して、更にスピードを上げていく。

ーーもう、ハムスターによって回される滑車の如く。


A｢ふっ…あははっ！回しすぎですよ！｣


途切れていく周りの景色の中、弾けたように笑うAの顔だけはよく見えた。

出逢ったばっかの頃のAは、無表情かムスッとしてるかで、黙ってると、怒ってんのこいつ？って感じで、でも。

…よく、笑うようになった。

笑ってればそれなりにいいんだからずっとそうしてればいいのに。そう思う反面、これを他に見せんなって思う。

ーーAを好きになって、初めて知る。自分の中のむき出しの本性を。ズルくて卑小な自分のことを。

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