【国見英】賽は遥か遠くにぶん投げる 2nd【青城】

ぼっち飯のやつがいる ページ4

ーーしまった、と思った。

夏休みの食堂内はお昼時だと言うのに人もまばらで閑散としている。

つい、いつものクセでここに来てしまった。
専らお昼ごはんはお弁当派だし、夏休みで朝陽先輩は居ないし、ここに来る必要がないっていうのに。

生徒会室で食べれば良かったな、と小さく息をついて、いつもの席へと一人座る。
今朝作ってきたお弁当の包みを開けると、いただきます、と手を合わせた。

一人には慣れてる。

そもそも人間関係なんて面倒で邪魔だし、一人の方が何かと都合がいい。

お弁当を口に運ぶ。咀嚼する。飲み込む。
一連の食べる作業だけを繰り返しながら、味気ないな、とふと思った。

大口を開けて笑う朝陽先輩。
とにかくうるさい及川先輩。
それを殴って黙らせてくれる岩泉先輩。
大体ニタニタと笑ってふざけている花巻先輩。
誰よりも達観してるクセして、それに乗っかって悪ノリする松川先輩。
何かと突っかかってくる国見。
私と国見の口喧嘩を仲裁しようとするも、間に挟まれて嫌がる金田一。

そんな、いつものうるさい日常はここには無い。
照明のスイッチを切ったように、食堂の景色が暗く感じてしまう。

一人の方が楽。
その気持ちは変わってない。でも。

ーー寂しい、なんて。


国見｢…うわ、ぼっち飯のやつがいる｣


背後からした声に、弾かれたようにして顔を向ける。
そこには部活の練習着姿の国見の姿があった。


A｢…何でいるの？部活は？｣

国見｢今昼休憩。朝陽先輩が貢いでくれた食券使いに来た｣


国見は答えながらいつもの定位置、私の向かいの席へと座ると、学食の人気メニューの手作りプリンをスプーンでつっついて食べ始める。


国見｢…何？見ててもやらないけど｣

A｢いや、いらないけど。アンタ金田一とか部活仲間と食べなくていいの？｣

国見｢休憩時間にどこで何しようが俺の自由。ていうかお前こそ何でここで食べてんの｣

A｢…間違えたの。いつものクセで｣


バカだろ、と国見が鼻で笑ってきてイラッとした。

けれど、少し前まで感じていた寂しさが国見が来た瞬間に一気に埋まった。悔しいけど。

国見はプリンをあっという間に食べ終えると、ふと私のお弁当の卵焼きにひょいと手を伸ばすと、一口でぱくりと食べた。


A｢ちょっと、私の！｣

国見｢…しょっぱい。ウチ甘い派なんだけど｣

A｢知らないわよ！ウチは出汁と醤油派なの。…ていうか勝手に取って文句言わないでくれない？｣

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