ずっと笑ってて ページ47
A「この藤棚!満開です!」
強引に俺の腕を引いていたAは足を止め、俺達の丁度頭上を指し示す。
そこには、蝶のような形をした小花を葡萄の房状に咲かせた藤の花がいくつもぶら下がり、鮮やかな紫色のカーテンを作り上げていた。
花巻「…あー、最近ここ通ると甘い匂いすると思った」
A「あ!あっちの藤の花、色違いです!」
これまた不意打ちに腕を引かれ、ぐりん。急な方向転換。ぴんと伸ばされたAの指先を辿れば、ピンク色の藤の花が瞳に映った。
A「花巻先輩の髪と同じ色…綺麗ですね」
私、この色が一番好きなんです。
屈託なく頬を綻ばせて笑うAに、不覚にもキュンと愛おしさが胸を突き上げた。
A「…私は、一緒に同じ景色を見て共有できるってすごく素敵なことだと思います。それが好きな人なら尚更」
するりと。俺の腕を掴んでいたAの手が滑り落ち、俺の手をきゅっと握った。
A「花巻先輩の気持ちが私に向かなかったとしても、今日見たこの景色は、ずっと鮮やかなまま私の中に残っていくんです。…切ないって感情が、今の私にはよく分からないですけど、それを理解したとしても、楽しいとか嬉しいとか、その時感じた気持ちはそのまま変わらないはずです」
Aらしい素直な物言いに胸を打たれる。Aの言葉は俺の心の海に透明に響いた。しんと波紋が広がるような優しさで。
A「正直なところですね、辛い顔するくらいなら、言っちゃえばいいのにって思います」
花巻「…何を?」
A「ちひろさんに好きって、ちゃんと」
俺の目から視線を逸らさずにAは言った。
真っ直ぐすぎる瞳に胸がギクリとした俺は、咄嗟にふいと視線を外す。
花巻「言わねーの、俺は」
…つーか、言えない。
好きだなんて言ったら、ちひろさんは優しいから絶対困った顔をする。気持ちに応えられない自分を責める。
好きな人のそんな顔は見たくない。いつだって笑っていてほしいんだよ。
A「私、花巻先輩のそんな顔は見たくないんです。ずっと笑っててほしいんです」
俺が考えていたことと同じことを言うAに、一瞬口に出してしまっていたのかと動揺した。
A「ずーっと花巻先輩ばっかり見てるんですよ、私。辛くないといいなぁ、悲しくないといいなぁ、幸せだといいなぁって、いつも思ってるんです」
混じり気のない純粋な気持ちが、うっかりすると深みにハマってしまいそうな程に胸に響いていた。
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世も末りょうこ(プロフ) - Komachiさん» バカな事ばっかしてトラブルだらけの人生だ😇脚色して(虫はガチ)ネタにするしかないな、と思ってる🥲不審者はあと、あすなろ抱き乳揉み男とか、スカートめくり電車男の二本立てが残ってるよ!そのままで大丈夫よ!名前飽きたからまた戻すと思う☺️ (2022年5月28日 8時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
Komachi(プロフ) - 世も末りょうこさん» 毎度毎度思うんだけどさ体験談多すぎて杏月ちゃんにいつもびっくりするよね!あ、名前変わってるけど呼び方そのままでいいのかしら? (2022年5月28日 6時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
世も末りょうこ(プロフ) - Komachiさん» こまっちゃんお久しブリ大根☺️これ私の小学生の時の体験を元にしてるよ!マジか!見に行ってくる!って見に行った先にセーラー服おじさんいたのよガチで🥲今思うと怖かったなーと思いながら書いてる😂いつもコメントありがとう! (2022年5月26日 1時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
Komachi(プロフ) - 会ったことないから会いに行きますが好きすぎる!w (2022年5月25日 17時) (レス) @page49 id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
世も末りょうこ(プロフ) - ことさん» やってくるバチクソ憂鬱イベント!!どうかいい結果でありますように!!※作者はバカなのでいつだって全てを諦めて思考放棄してます。これからもマッキーと変態マネの攻防戦を見守って頂けると幸いです。 (2022年5月24日 9時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年10月13日 12時