【花巻貴大】この恋と心中します【青城】

経営破綻に追い込む ページ19

…え？何で照れてんのこいつは？恥ずかしがるポイントが全然分かんねぇんだけど。

目を丸くさせてAを見つめていると、Aは言い訳を並べ立てるようにしてテンパりながら口を開いた。


A｢はっ…はははにゃまき先輩に関わることは全て把握する所存なので！…その、ほら！私って、いずれは毎日花巻先輩のパンツを洗濯する身ですしお寿司！？｣

花巻｢…おかしな妄想すんな変態｣


▲▼


花巻｢…閉まってんな｣


カラオケ店の前に到着する。…が、出入口にはCLOSEの札が掛かっていた。
更に、自動ドアにはデカデカと、閉店のお知らせの文字と、これまでご愛顧頂きましてありがとうございました、などとつらつらと文面が綴られていた。


A｢花巻先輩どうしよう…｣


切羽詰まった声に目を向ければ、顔を蒼ざめてわなわなと唇を震わせるAの姿があった。


A｢私がタンバリン持ってっちゃったせいで経営が傾いちゃったのかもしれません…｣

花巻｢…は？｣

A｢私が経営破綻にまで追い込んで…どうしよう…。花巻先輩…私、自首しなきゃいけませんよね…？｣


どうしたらそういう考えに行き着くのか、Aはバカ真面目に自分のせいだと思って、酷く動揺していた。
笑いそうになるのを、口の中を奥歯で嚙むようにし堪える。


A｢まっ、まずは、このカラオケ屋さんの本店に電話をして、タンバリンを誤って持って帰ってしまった時の状況の説明と謝罪ですよね。そ、それから、｣

花巻｢………ぷっ｣

A｢へ？｣


耐えようにも耐え切れず、遂には吹き出した。

もう無理だ。なんだこいつ。頭ん中どうなってんだよ。おかしすぎだろ。

腹いっぱいに声をあげてゲラゲラと笑いだす俺に、Aはきょとんと首を傾げていた。


花巻｢バカだなぁ…お前。タンバリンひとつで店が潰れるかよ｣


ひとしきり笑った後、目尻に溜まった生理的な涙を指で拭い取りながらそう言うと、Aはぱちぱちと瞳を瞬かせた。


A｢そう…なんですか？｣

花巻｢そーそー｣

A｢…そっ、かぁ…、良かった…、｣


へなへな、ぺたん。

緊張から解放されたからか、Aは力が抜けたようにしてその場に膝を折ってしゃがみ込む。バッグからタンバリンを取り出すと、愛おしそうにふっと微笑んだ。


A｢…きっと、バリンちゃんが私の元を離れたくなかったんですね。大事にします｣

花巻｢変な名前付けんな。バカなこと言ってないで早く帰んぞ｣

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