横暴 ページ21
A「岩泉くんの言いたいことは今聞く。だから、金輪際私に関わらないでほしい」
私の手を引いて廊下を突き進んでいく岩泉くんの背中に向けて、私は一息に言い放つ。すると、岩泉くんはその足をピタリと止め、私を振り向いた。
岩泉「金輪際は無理だ。俺がしたいようにする」
A「…横暴だわ」
岩泉「横暴は俺より岡崎の方がよっぽどだろ」
A「そんなこと、」
ふと、キュッと上履きと床が擦れる音がすぐ傍でして、私は弾かれたように背後を振り返った。
…が、そこにいたのは、面識の無い他クラスの生徒で、私は小さく息をつきながら緊張の糸を弛ませる。
A「…岩泉くん、ここで立ち止まるのはやめよう」
岩泉くんを追い抜かして歩き出せば、するりと手を離される気配がした。私に逃げる気が無いと悟ったからなんだろう。
私は廊下の奥、特別教室の一室を扉を開けると、誰もいないことを確認してから岩泉くんにも入るように促した。
岩泉「そんなに俺といるところを岡崎に見られたくないのか?」
A「うん、すごく困る。正確には男子全員ね」
後ろ手に扉を締め、内側から鍵を掛けながら私は答えた。
A「今こうして岩泉くんと話してるのは裏切り行為だわ。だからこれっきりにしたい」
岩泉「…男と話すなとか共学じゃ避けられねえだろ。お前はこの先もそうやってずっと岡崎の目気にして生きてくのか?」
A「ーーずっとじゃない」
私はぴしゃりと答えた。
岡崎くんは人を信じることができない。それは、お金のことで小さい頃から人に裏切られたり、軽く扱われたりすることが多かったから。彼は人の愛情や善意を信じることができず、ちょっとした出来事がきっかけで疑いや怒りを抱いてしまう。
岡崎くんは孤独感を拭えずにいる。私と同じ、心を満たしてくれる愛を必要としている。
A「岡崎くんは自分に自信がないの。だから、受け入れる私に見捨てられたくないって必死にしがみついてくる」
どうか裏切らないで、と縋りつかれて、岡崎くんには私がいないとダメなんだと思った。
A「私は彼の傍にいて、大丈夫って伝え続ける。そうしたらいつかきっと、彼は私を信じてくれる」
私の言葉を受けた岩泉くんは、眉根を寄せて険しい顔を浮かべた。
岩泉「それでお前は幸せなのかよ?」
A「幸せだわ」
じっと鋭く目を光らせる岩泉くんに、私は負けじと見つめ返した。逸らすことなく、一点に。
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スナック杏月(プロフ) - なぅさん» すみません😭お久しぶりでございます😭冬は眠くて書く時間に費やしてた時間が睡眠時間になってた😭眠れる森の美女だった😭王子様はいなかったから自力で起きた😭 (2023年2月22日 22時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
なぅ(プロフ) - 生きてた...?杏月ちゃんあなた生きていたの...? (2023年2月22日 22時) (レス) id: 061659d46e (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - フェアリーさん» いつもコメントありがとうございます🥰及川さんはファンが多くて、岩ちゃんはガチ恋が多いと予想してますねぇ🤔あんな男前惚れないはずがない!!(岩ちゃん推し)次回も楽しみにして頂けると幸いです! (2023年2月6日 19時) (レス) @page22 id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
フェアリー(プロフ) - 岩泉「ーー綺麗だよ、お前は」は反則だろ・・・それで何人の女を落としてきたんだ岩泉!!(( (2023年2月6日 13時) (レス) @page22 id: ebc545326a (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - Komachiさん» こまっちゃんお久しぶり!!嬉しいよう😭旅に出て帰ってきたわ🥲前よりもペース緩めて執筆していこう思うよ…ありがとう🥹🫶 (2023年1月18日 1時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年12月2日 14時