【岩泉一】恋に恋するクズですが何か？2nd【青城】

当惑に揺れる ページ17

▲▼岩泉 side


及川｢もう！まっつんのおっちょこちょい！｣


朝練後、制服に着替えて部室を出ようとしたところ、松川がスマホがないと言い出した。
考えられる場所をくまなく探していると、見つかったのは及川のバッグの中からだった。


松川｢お前が間違えて自分のバッグに俺のスマホ突っ込んでたからだろ｣

及川｢まっつんが机に放置してたからいけないんでしょー？｣

松川｢自分のスマホと間違えんなよ。ケース全然違うじゃん｣

及川｢お、及川サンだって、可愛い間違いくらいしますぅー！｣

岩泉｢どこも可愛くねえよ｣


今日も今日とて賑やかしく、部室から教室へと足を向かわせていると、昇降口で佇む桜色の頭を見つけた。


及川｢あれ？マッキー何してんのー？｣


日直の仕事があるから先に行く、と少し前に部室を出たはずの花巻の背中に、及川が声を掛ける。

一拍置いてゆっくりと振り返った花巻は、何か考え込むような、苦りきった顔をそこに浮かべていた。


花巻｢ーーなあ、Aちゃんの彼氏ってやばくね？｣


当惑の眉を顰める花巻の口から出たあいつの名前に、俺の胸は嫌にドキついた。


岩泉｢…何かあったのか？｣

花巻｢さっきさ……いや、昨日のことから話すわ｣


花巻はいつになく真剣な表情で、俺の知らないところで起きていた話を打ち明けた。
昨日、Aに教科書を借りた時のこと。俺達がここに来る少し前のこと。怯えた様子のAのこと。異常な執着を見せる岡崎のこと。


ーー“辛くないよ、ちっとも“


最後に言葉を交わした数日前のあいつの姿を思い出し、俺は嘆息した。

…どこがちっとも辛くないだよ、ボゲが。今まで色んなやつのこと惑わせてきたくせして、何で黙って従ってんだよ。


及川｢じゃあ昨日のはマッキーの話の後ってことか…｣

岩泉｢は？お前も何かあんのか？｣

及川｢…実は昨日さ、その岡崎クンに腕掴まれて階段上ってくAちゃん見かけて、俺追いかけたんだよねぇ｣


岡崎クンったらAちゃんにすごい怒声浴びせててさ、Aちゃんは縮こまってて、我慢できなくなって割り入ったら、岡崎クンに掴まれてたAちゃんの手首真っ赤でさぁ。

…ペラペラと話す及川を前に、俺は身体をわなわなと震わせた。

何で。何で。


岩泉｢それを早く言わねぇんだよ！！｣

及川｢いだぁッ！！だあってムカついたんだもん！！｣


我慢ならずに思いっきり蹴りを入れると、及川は目尻に涙を浮かべながら声を張り上げた。

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