うきうきルンルン ページ11
花巻「山田ー、現国の教科書貸してー」
休み時間、廊下側の自分の席でぼーってしていると、開け放たれていた窓から慣れた声が飛んできた。
A「山田くん、今日休みだよ」
まじかー、と零しながら、花巻くんは窓枠に手を付いて項垂れる。私はその様子を横目に、机の中に手を突っ込んで現国の教科書を取り出すと、それを花巻くんに差し出した。
A「私ので良ければどーぞ」
花巻「女神…!」
神を崇めるように両手を大きく掲げる花巻くんに、大袈裟だと小さく笑みを零す。
花巻くんはありがたそうに教科書を両手で受け取ると、ふと聞きづらそうに、でも気になって仕方がないようにして、尋ねてきた。
花巻「…Aちゃんさ、岩泉と喧嘩した?」
A「喧嘩じゃないよ。彼氏できたから距離置くことにしたの」
花巻「…え?マジで?」
こくりと頷けば、花巻くんは驚いて丸くさせていた目を細めて、深く長く息を吐き出した。
花巻「俺…Aちゃんは岩泉のこと好きなんだと思ってた。そーいう顔してたから、てっきり」
A「どんな顔?」
花巻「うきうきルンルンしてた」
A「ふふ、何それ」
完全営業用の笑顔を浮かべる私に、花巻くんは腑に落ちないという風に首を傾げる。
花巻「前みたいに笑ってる方が可愛かったよ」
笑いながら私の頭をわしわしと無でる花巻くんは魅力的で、以前の私だったら、ああ美味しそうだな食べたいな…なんて思っていただろうに、今は何の感情も湧かない。
それは岡崎くんという彼氏の存在があるからなのか、それとも。
誰よりも熱い想いを私に注ぎ続けてくれていた、真っ直ぐな彼の温度を知ってしまったからなのか。
岡崎「ーーねぇ、俺のモノに気安く触らないでくれる?」
血の通っていないようなその声に、氷を胸に当たられたようにひやりとした。
振り向こうとすれば、その前に手を掴まれて強い力で引っ張られ、足が縺れるようにして二、三歩踏み出す。戸惑うように瞳を揺らす花巻くんと一瞬だけ視線がかち合った後、手を引かれるままに彼を追って教室を後にした。
三年のクラス教室が並ぶ廊下を抜け、階段を上り、誰もいない資料室の前までやって来たところで、ようやく彼は足を止める。
A「ねぇ、岡崎く、」
岡崎「お前さぁ…さっきの何…?」
強い声だった。普段とは違う、苛ついた様子で彼は頭を搔きながらやっと私を振り向く。
その肌は白く色を失い、目には危うげな光が宿っていた。
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スナック杏月(プロフ) - なぅさん» すみません😭お久しぶりでございます😭冬は眠くて書く時間に費やしてた時間が睡眠時間になってた😭眠れる森の美女だった😭王子様はいなかったから自力で起きた😭 (2023年2月22日 22時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
なぅ(プロフ) - 生きてた...?杏月ちゃんあなた生きていたの...? (2023年2月22日 22時) (レス) id: 061659d46e (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - フェアリーさん» いつもコメントありがとうございます🥰及川さんはファンが多くて、岩ちゃんはガチ恋が多いと予想してますねぇ🤔あんな男前惚れないはずがない!!(岩ちゃん推し)次回も楽しみにして頂けると幸いです! (2023年2月6日 19時) (レス) @page22 id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
フェアリー(プロフ) - 岩泉「ーー綺麗だよ、お前は」は反則だろ・・・それで何人の女を落としてきたんだ岩泉!!(( (2023年2月6日 13時) (レス) @page22 id: ebc545326a (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - Komachiさん» こまっちゃんお久しぶり!!嬉しいよう😭旅に出て帰ってきたわ🥲前よりもペース緩めて執筆していこう思うよ…ありがとう🥹🫶 (2023年1月18日 1時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年12月2日 14時