【リーガル・ハイ】出会いは突然に (ページ2)

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第一章　第一条ページ2

階段になっている大教室に詰め込まれた学生たちは、講義中にもかかわらず、約半数近くの者が思うが儘、読書や睡眠、動画を見たりと忙しい。その中でも一番多いのはSNSで友達とやり取り、あるいはスマホゲームをする者たちだろう。
残り半数はまじめに講義を聞き、教科書に蛍光ペンで線を引いたりレジュメとにらめっこしたりしている。
私、小野寺Aがどっち属しているかと問われれば、後者だ。

(まだ入学から半年とちょっとなのにこのありさま…、まぁ、三流大学だもん、そんなものか)

かくいう私も、几帳面に線を引き、レジュメを読んではいるが、教授、もとい先生の話は右から左である。
只今、憲法Ⅱの講義中であり、担当教諭はつまらない講義をすることで学生の間で有名な先生だ。
私も例に漏れずそう思っている学生の一人だが、先生の皮肉な口調はやや面白いと感じている。

「ねぇ、後で線引いてたとこ見して、転寝しちゃってたわ」

隣から声をかけてくるのは、大学入学以来の友人、高橋真理である。
彼女は、私以外にも仲良くする人が多いが、講義中と昼食だけはほとんど必ず私と受けている。

「はいはい、ていうか、私も聞き漏らしてるとこあるからあんまり参考にならないよ?」

「あー、いいのいいの、定例のレポートの時どこを見るかどうかの大まかな目印になりゃいいんだから」

「それも、そっか。
あの人、レポートのときあんまり教科書から引用させないしね」

「そうそう」

ちょうど解説がレジュメ部分に入り、教科書はお役御免になったために、そのまま真理に線を引いた箇所を見せながら、目線をレジュメに切り替えた。

　 ***

「あー、重い」

今は大学の帰り道、それなりにまじめに講義を受ける私のカバンは、ポケット六法やら憲法の教科書やら、レジュメの詰まったファイルやらノートやらが詰め込まれており、だいぶ重い。

だからかもしれない。
ふと足がもつれ、階段から転がり落ちた。
そこから先は、目覚めるまで記憶がぷっつり途切れている。

地獄が始まったのはいつだと聞かれたら、今、この瞬間だったんだろう。

「あ、目覚めた?気分はどうかしら?」