178.本気 ページ35
「泣けばいいじゃん」
松村くんが私を見下ろしながら呟く。
あの場から連れ出してくれた手はまだ繋がれたまま。
「……私に泣く資格なんてない」
そうだ。私に泣く資格なんてない。
だって私と樹はただの……
「ただの幼馴染だから？」
松村くんがため息を吐いた。
「確かにお前らの関係に名前があるとしたら幼馴染だけどさ。瀬戸にとっては好きな人だろ？」
「……っ」
「好きな人が自分の友達と…って考えたら普通キツいだろ」
「……」
「いつもこんななの？樹に彼女ができるたびいつもこんな風になってんの？」
「やっぱり、樹となおちゃんは付き合ってるんだね……」
「あ、いや、違くて」
「いいよ今更隠さなくて。あんな場面見せられたら流石に気づくよ」
「いやだから違うんだって、あれは」
「いいの！私もうずっと覚悟できてるから！」
松村くんが何か続けようとしているのを大きな声で遮る。
「覚悟って……」
「最近、珍しく彼女のいない期間が長かったから衝撃が大きかっただけ。相手がなおちゃんなのもちょっと、いやだいぶ衝撃だったけど、よく考えたらお似合いかも」
「瀬戸」
「うん、お似合いの…2人…」
言い聞かせるように呟く私を松村くんが痛々しいものを見るような目で見つめた。
「……覚悟ができてる奴の顔じゃないでしょ」
松村くんの手が頭の上に乗る。
それから優しく何度も撫でられる。
やめてよ。
泣きたくなっちゃうじゃない。
いつか樹の隣に、私じゃない誰かが並ぶ日が来る。
そしてそれはいつか彼女という立場から一生を添い遂げる約束を交わす唯一の相手になる。
法律上、私たちはもう結婚できる年齢になった。
歳を重ねる毎にその可能性が増す恐怖。
なおちゃんは、今まで樹が付き合ってきた人達とは全く違うタイプ。
だからこそ、本気なんだとわかる。
私が松村くんや他の男の子と話している時は必ずと言っていいほど間に割り込んできたのに、パタリとそれがなくなった。
大学では終始なおちゃんと一緒にいる。
帰りも送ってあげてるのかな。
樹くんが高崎さんと並んで電車に乗っているのを見た、2人付き合ってるのかなという噂話がどこからともなく耳に入ってくる。
今まで私に向けられていたはずのあの意地悪だけど優しい笑顔が、私以外の人を映している。
その事実がたまらなく苦しくて、気が変になりそうだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3047人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きい(プロフ) - いつか続きが読めるのをお待ちしてます！ (2月26日 4時) (
レス) @page38 id: ee589dc596 (このIDを非表示/違反報告)
yuna(プロフ) - 何度も繰り返し読んでしまうくらい大好きな作品です！いつか続きを知れる日を心待ちしています！ (5月15日 1時) (レス) id: 5cd2a49fca (このIDを非表示/違反報告)
ﾘﾝ(プロフ) - ず〜〜〜っと待ってました！嬉しすぎますありがとうございます🤍 (2022年8月24日 2時) (レス) @page38 id: 5cabe62e5a (このIDを非表示/違反報告)
arisa.(プロフ) - 更新待ってました嬉しすぎます😭 ちょっとずつで大丈夫なのでまた更新して下さると嬉しいです＾＾ (2022年8月24日 1時) (レス) @page38 id: ab602fbbda (このIDを非表示/違反報告)
たなか(プロフ) - 2016年からずっと読んでますまた更新嬉しすぎましたありがとうございます😭 (2022年8月24日 0時) (レス) id: 11c1363eba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：HARU
| 作成日時：2019年1月4日 0時
