38.カフェモカティー ページ39
Aside
『ん…』
暖かい何かが、手を握っている。ゆっくりと体を起こせば…降谷さんが私の手を握っていた。
『零さん…』
「ん…」
小さく呻く彼。綺麗なシャンパンゴールドのサラサラの髪が、彼の褐色の肌にかかっている。それが、不覚にもカッコいいと思えてしまったのだ。
「ゴメン…ゴメンな、A」
涙で顔を濡らしながら、眠る降谷さん。きっと、後悔をさせたんだ。彼は自分自身を責めて警察になる夢を、諦めてしまうんじゃないのかな…?
ごそごそと、無事だったバッグの中から母のロケットペンダントを出した。そっと中を開く。小さな錠剤の薬が一粒、手のひらに転がった。これは母の遺産の１つと言っていいだろう。
FBIが、考案した薬の試作品で相手に飲ませると、その相手が飲ませた人のことを忘れてしまうという効果があるらしい。試作品だし、効果も半分らしいから私のことは、義兄から聞いた、写真を見た程度の認識になるはず。
私は、透明なグラスに水を注ぎ、眠る彼に飲ませた。約束したことは、私が１人で選びたかったから断った…とでも言っておけばいい。彼とは、会っていなかったことにしておけばいい。
そうすれば、彼は警察官になる夢を諦めないで済むはずだから。
『…あの、すいません…』
「…ん…え!?は、萩原の妹!?」
『萩原?どなたか分かりませんけど…?』
驚いた降谷さんの、透き通った声。私は、彼の言葉を否定した。
「病室、間違ってませんか?貴方、疲れたようにベッドに寝ている人を確認せず、眠っちゃいましたよ…』
彼の困惑した顔が、私を真っ直ぐ見つめている。…ごめんなさい、零、さん。
『…はっきり言って迷惑です。出ていって下さいません?』
「し、失礼しました!!」
急いで立ち上がり、病室の外へと走っていく彼。私は、彼が出ていってことを確認して布団の中に潜った。嗚咽が零れ、止まらない涙が溢れてくる。
『…零さんっ…』
その日、私の恋は答え合わせすら叶わずに、夕焼け空の彼方に吸い込まれていった。
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セニオリス - ちりさん» コメントありがとうございます。完結できるとは思わなかったので、本当に良かったです。続編の件はどうしようか迷い中です。楽しく読んで下さりありがとうございました!! (2019年1月27日 3時) (
レス) id: f671b24827 (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - Vermutさん» コメントありがとうございます!!そんな風に思っていただけて嬉しいです。読んで下さって本当にありがとうございました!! (2019年1月27日 3時) (レス) id: f671b24827 (このIDを非表示/違反報告)
ちり(プロフ) - 完結おめでとうございます！いつも楽しく読ませて頂いておりました！！続編あるなら楽しみです！もしよろしければ、結婚式する前や後や、結婚式の話も読んでみたいです！ (2019年1月25日 22時) (レス) id: 85512324d5 (このIDを非表示/違反報告)
Vermut(プロフ) - 完結おめでとうございます。最高のエンディングで感動しました。素晴らしい作品でした。こんな作品に出会えて嬉しいです。 続編の件、大賛成です！ (2019年1月23日 19時) (レス) id: 6de8030682 (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - 和美/美香さん» ありがとうございます!!これからも頑張っていくつもりですので、この作品をよろしくお願いいたします!! (2018年12月27日 20時) (レス) id: f671b24827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セニオリス | 作成日時：2018年12月24日 8時
