貴方に捧げる人生【梶裕貴】 (ページ33)

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※過去編に入ります
※目線なしです

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Aが産まれたのは東京の外れのあまり人気のない家だ。

母も父もお互いについてしか考えていなかった。

Aという名前は、兄がつけた。

親は産んだら産んだで何もしない。

家事も、世話も。

当時14歳だった兄は中学3年。

受験のシーズンだったのだが、Aの事を考えると学校にいくなど考えたこともなかった。

そんな親から隠れて育てていたある日、兄は言葉もわからぬAに決心した声をかけた。

兄「今日はいっぱいご飯たべたねぇ、えらいえらい

……ねぇ、A。

俺さ、Aを幸せにしてやりたいんだ…

唯一の妹だからな。

だから、俺と一緒に暮らさないか…？

今までより不便になるだろうけど…。

俺のおばあちゃんがいてね、子どもが大好きなんだ

今の暮らしよりは全然いいと思う。

ていうか、もうおばあちゃんに相談しちゃったんだけどね…!｣

Aはいつもは何を考えてるのかわからぬ行動をしていた。

でも今日、今この時は違った。

兄に向かって手を伸ばし、兄の差し出した小指を力強く握った

兄「…A。

俺、どんなやつからでもお前のこと守るからな…

絶対に1人になんてしない、、

お兄ちゃんに任せろ…!」

その次の日から両親が寝ている間に兄とAは家を抜け出した。

日々貯めていた少ない貯金と共に。

両親の家から祖母の家まではかなりの距離がある。

まだ0歳なこともあり、通りのお店などでミルクを作らせてもらいながら、オムツを変えながら。

泣き止まない時は一旦向かうのを止めて大きな公園に行き、ドッグランにいる犬に会わせてみせたり。

運のいいことにその日は雨も降らず、暑すぎずといった絶好の日だった。

Aには、いいかもしれないけど、抱っこしてる兄は赤ちゃんの温かさに何度かしんどくなりながらも水分補給をしながら歩き続けた。

兄「や…やっと着いた……」

家を出たのが4:30

今は11:24

かなりの時間を歩いた。

兄「ばぁちゃん…!俺だよ…!開けて……!」

祖母「あんた、歩いてきたのかい!?

とりあえず入りなさい…!

赤ん坊も降ろして……」

兄「ありがと………」

兄はAが布団に運ばれるのを見送る。

兄「お兄ちゃんに任せとけよ…A……」