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「どうかな」と言った俺に
Aはゆっくり近付いて
右手の甲を頬に当てた
ドキドキしていた。
Aの動きが
全部スローモーションで見えて
ドキドキ、ドキドキしていた。
A「まだ少しありそう」
そう言って離れようとした
Aを捕まえて
思わず抱き締めてしまった
「ごめん。ちょっとだけ」
腕の中のAは
小さくてシャンプーのいい香りがした。
大人しく抱かれていたAは
少しすると俺の胸に手を当てて
俺を押し剥がした
A「誰にでもこんなことしちゃ
ダメですよ。勘違いされちゃうから」
「誰にでもしない」
A「薬とお粥、飲み物はそこです。
では、これで」
「もう？」
A「･･･ドンヘさん」
「ドンヘでいいのに」
A「もう電話しないでください」
「は？」
A「メッセージも送らないでください」
「なんで？」
A「できたら私の番号は
削除してもらえるとありがたいです」
「だからなんで？」
そんなに気持ち悪かったかな。
まぁ、そうだよな。
「ごめん」
A「じゃあ、お願いします」
告白も出来なかった。
悲しいというより
切ないな･･･。
運命的なものを感じていたのは
俺だけだったんだ。
一緒にご飯食べたり
映画見たり、海に行ったりしたかった
手を繋いで歩いたり
キスもしたかった。
なんでかな。
当たり前に付き合えると
思い込んでいた。
そんなわけないのに。
俺はアホなのか？
電話番号、削れと言われてもね･･･。
諦めがつかないよ･･･。
ほぼ知らない人なのに
自分でも不思議なほど
Aにハマってる。
翌日はAの薬のおかげか
熱は下がってて
普通に仕事に出掛けた
この日はイベントの打ち合わせ。
いてもいなくても一緒だから
広い会議室の端っこで
ただひたすら
Aの写真を眺めていた。
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作者名：さるるん
| 作成日時：2024年3月8日 13時
