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マンションの前に立っていたA
路肩に横付けすると
車を降りてAに声をかけた
「荷物、それだけ？」
A「あ･･･こんばんは」
「どーも。荷物」
A「はい。他は引っ越し屋さんが」
「乗って」
大きめのスーツケース2個
彼女には車に乗るよう言い
俺はトランクを開いた
スーツケースを2個並べて
リアドアのクローズのスイッチを押すと
車からビーッという音が鳴った
助手席に大人しく座っているA
「シートベルト」
A「はい」
すごい無愛想に見えてるだろーな。
もしかしたら、
怒ってると思われてるかも
そう思ったけど
なんせ振られてるからね
いいんだ。
マンションに着くと
スーツケースを降ろし
1個づつ持って部屋へ
「俺は出るから。
浴室はそこ。冷蔵庫の中
飲み物しか入ってないど好きに飲んで」
A「え？」
「なに？」
A「お仕事ですか？」
「なわけ。さすがに一緒には
いられないでしょ」
A「どこに行かれるんですか？」
「事務所か、誰かメンバーのとこ」
A「なんか･･････ごめんなさい」
「いいよ」
A「怒ってます･･･よね」
怒ってはない。
ただ、俺にもプライドが
あってだな･･･。
「じゃあ、言わしてもらうけど。
俺に電話番号、削れって言ったのに
自分はとっといたの？
それは反則じゃね？」
A「･･･すみません」
ちょっとキツかったかな･･･。
リビングの入口で
俯いて手を前にギュッてして
立っているA
「どいてくれる？」
A「･･･あ」
Aのすぐ横を通り過ぎて
玄関で靴を履いたけど
振り返って見たら
彼女はまだそこに立っていた
玄関のドアを開けて
一旦出て
エレベーターの前まで行ったけど
なんとなく引き返した
もう一度ドアを開いたら
さっきの場所に蹲っているA
靴を脱いでズカズカと入ると
気が付いたAが
急いで立ち上がって
俺の邪魔になると思ったのか
壁にくっついた
「なにしてんの？」
A「･･･ごめんなさい」
思わず詰め寄って
顔の横の壁に手をついた
「なんで泣いてんの？」
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作者名：さるるん
| 作成日時：2024年3月8日 13時
