story 10 -YOU- ページ10
明け方陽が昇る前に目が覚めて
公園の芝生へ向かった。
心地いい風が吹き抜ける
その緑の絨毯に背中を預けた。
東の空から明るくなってきて
元々そこにあった雲達が赤く染まり出す。
スマホのカメラで
その瞬間を収めた。
最近、色々うまくいかない。
日本から来て何年たったかな･･･。
もっともっと辛いこと
沢山あった。
A!!!甘えないの!!!もっと頑張ろっ!!!
と、自分で自分を励ましてきた。
それでも辛いものは辛い。
視界の端に人影を感じて
体を半分起こすとジョンウンがいて驚いた。
｢ジョンウン？｣
YS｢はい。おはようございます｣
なんとなく傍にいて欲しくて
芝生をポンポンと叩いた。
あれ？座らないの？
もう一回、ポンポンとしたら
遠慮したのか足元に腰を下ろしたようだった。
何も言わずそこにいてくれることが
なんだか温かくて、嬉しくて
涙が溢れた。
ジョンウンに見られないように
背中を向けたら
近付いてくる気配を感じて
体に力が入った。
でもすぐに優しく頭に触れた手の温もりに
体の力は抜けて、さらに涙は溢れた。
涙を出し切ると
起き上がって顔を見られないように
ジョンウンに背中を向けた。
｢ごめんね。ビックリしたよね？
我慢してたのに
ジョンウンが座ったら
止まらなくなっちゃって。
ダメね。最近弱くなっちゃって｣
強がって言ったつもりなのに
ジョンウンが後ろから優しく
抱きしめてくれて･･･
また涙が溢れる。
なんだろう？
この安心感。
何かに包まれて守られているように
全てを預けられた。
凄く年下のはずなのにな……。
｢そろそろ、時間じゃない？｣
YS｢大丈夫？｣
｢もう大丈夫。ありがとう｣
何度も振り返るその後ろ姿を
小さくなる背中を
私はその場から眺めつつ
自分の気持ちに蓋を閉めた。
惹かれそうな程の
優しい手の感覚と
ぬくもりだったけど。
惹かれちゃダメ。
あの子はアイドルで
私はただの作家だから。
辛い思いはしたくない。
あの子が受け入れてくれたとしても
周りは許さないから。
あの子も辛い思いをするはず。
甘えないの!!
A!!!一人で生きていくって
決めたじゃない!!
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作者名：さるるん
| 作成日時：2015年1月17日 0時
