10.BOMB ページ10
期末考査も終わり、春休みに入る。
予定が合えばご飯でも行こうと海人と約束をした。何度もしている約束でも、叶えたことは数回しかない。
もう、3日になる。帰ってこなくなってから、3日も経ってしまった。
探そうにも、連絡が取れない以上どうしようもなく、毎日期待をしてドアを開けてため息を吐く、の繰り返し。
｢ただいまー…｣
返って来ないだろうと思いながらも、すっかり慣れてしまった独り言。でも今日は違った。
｢おかえりー｣
リビングのソファーにだらんと座ったまま、首だけをこちらに向けて手を振る廉。3日ぶりだった。
｢…いなくならないって言った｣
｢ん、ごめんね｣
｢…おかえり｣
｢ただいま、こっちおいで｣
また困った様に眉毛を下げて笑うと、ポンポンと隣を叩く。3日間何をしていたのかと問うと、｢ひみつー｣とはぐらかされてしまった。
｢どーだった？｣
｢なにが？｣
｢海人｣
ガヤガヤと煩いテレビの音を背景に、廉が唐突に口を開いたかと思えば、話題は海人。
気にしてなさそうな顔をしながらも、気になるんだろうな。高校生の時から、廉はよく海人のお兄ちゃんのような存在だったし、本人もそれを前面に出していた。
｢あー、テストは何とか乗りきったよ｣
｢そっか。Aは？｣
｢まあまあ。海人よりは上だと思う｣
｢海人に負けるのは屈辱よな｣
ワハハって笑う。海人がもしこの場にいたら、｢2人ともサイテー！｣って拗ねて、廉が｢ごめんごめん｣って宥めるんだろうな。
｢無理したんちゃう？海人も｣
｢ん？｣
｢…んーん、なんでもない｣
ふとした時、廉は何とも言えない顔をする。口をキュッと結んで、眉間に皺を寄せて。すごく辛そうな顔をする。
気づいてないとでも思ってるのかな。私を誰だと思ってるの。
｢…んふ、どしたん？｣
ごろんと廉の膝に頭を乗せて横になる。下から見る廉の顔。ビックリした顔でコチラを見て、そのまま右手を私の頭に乗せた。
｢廉ってさー、分かりやすいよね｣
｢なんや急に｣
｢好きって顔してる｣
｢…ん、なにを？｣
廉の声のトーンが落ちる。優しい顔をしたかと思えば乗せられた右手はそのまま頬に滑り落ちてきた。
懐かしいのに、懐かしくない。体温だけが足りない。
｢海人のこと、だいすきなの、全部出てるよ｣
そういう私に、
｢…そこにAも入れといて｣
なんて。
*
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作者名：みう
| 作成日時：2023年12月5日 21時
