08.地獄はどちら ページ8
「そういえば」
お風呂にも入りお揃いの部屋着を着てソファーでダラダラとしていた21:30。
「明日、海人が来るんだけど…」
「あ、そうなん」
…しれっと終わった。あれ、もっと反応があると思ってたのに。
隣に座る廉を見ても、顔色ひとつ変えずにテレビを見ている。
「…いい?部屋入れて」
「いーもなにも、オレが決めることじゃないよ」
「…まあそうだけど。というか廉のこと、海人も見えるのかな」
「さあ。まあどっか行っとくわ」
どうも、この話題になると私も踏み込みづらい。
廉がどうして現れたのか。何の為にユウレイとして私の隣にいるのか。いつまでいるのか。
期限がないなら、私はこのままずっと廉と一緒にいたいな。周りから見たら可笑しな人だと思われてもいいから、私の人生を廉と2人で過ごしたい。
「だから、Aのシアワセ探しやって」
「…え」
「俺の気が済むまでおるよ」
「…こわい」
「ユウレイ舐めんといてや、丸見えやで」
心の中も頭の中も全部お見通しで、感傷じみた事を思っていたことが何だか恥ずかしくなる。
どうせバレているなら、いっその事、
「好き好きうっさい」
廉すき!だいすき!すきすき!!!って思ってみたら、これも即バレ。
「好きだよ、廉のこと」
「オレも、好きだったよ」
「だったじゃないよ、今もだよ。わたしの好きな人はずっと、廉だけだよ」
傍にあった綺麗な手に触れてみる。まるで、外にいるみたいに冷たい。
握り返してくれるのに、私だけの一方通行。こっちを見て、眉毛を下げて困ったように笑う。
「…オレは死んだ。生きてる人間が死んでる人間を想い続けながら生きていくのは残酷だよ」
「廉を忘れて生きていく方が残酷だよ。地獄だよ」
「……、」
「忘れろなんて、言わないで、」
握った手をより一層強く握れば、廉が「ごめん」と私を引き寄せて抱き締める。
今自分がどんな顔をしているか。酷い顔しているのが自分でも分かる。隠すように胸に顔を押し当てる。
どれだけ耳を澄ましても、廉が生きてる音は聞こえなかった。
*
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作者名:みう | 作成日時:2023年12月5日 21時