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05.別れ ページ5

「今はこれが流行ってんねや」





沈黙が続くことが耐えきれなくなって付けたテレビ。バラエティー番組に今流行りの芸人が出ていて、テレビ側からの笑い声が聞こえる。


そうだよね。廉はこの番組も、この番組に出ている芸人のことも知らないんだよね。




「突っ立ってないでこっちおいで」




ふっと緩む気持ち。自分の家じゃないくせに、って軽口を叩きたくなった。前みたいに。




「オレいくつになった?」


「にじゅう、いち」


「まあそらそうか、老けたもんな」


「…は」


「ピチピチの時代は終わってるわ」




変顔にもならない変顔みたいな顔をしてこちらの様子を伺う廉。本当に失礼。高校生の私だったら迷わず蹴りを入れている所だった。




「確かにもう終わってるかも。楽しいことも何も無いから、毎日大学と家の往復だけだし」


「遊びに行かんの?」


「たまにね。でも頻繁には行かないかな」


「いや、ちゃうくて、」




乾いた笑い声が響く。廉と、どうやって話してたっけ。高校生の頃は、話題がポンポンと出てきて沈黙なんて喧嘩した時ぐらいしか無かった。





「好きな人とか、…彼氏とか」





言いづらそうに、下を向きながら、廉が言う。


私もぎゅっと手を握る。下唇を痛いぐらい噛んだ。





「私は、別れたと、…思ってないから」





私たち、別れたっけ?お別れって、別れ話を経てするものだよね。


私、今でも廉のことーー...
















「別れてるよ、オレらは」


「…、」


「ごめんな」





廉が謝る。ちがう。全部ちがう。


廉はいつも喧嘩して謝ってくれたあと、すぐに空気を変えてくれてた。今みたいに、悲しそうな顔をして下を向いたりなんかしなかった。





「れん、わたし、」


「もう4年経ってるし、そろそろAも前向かんと」


「でもわたしは、まだ」


「A」





それ以上は言うなと、廉が顔を上げる。目頭が熱い。隠そうとして下を向いた反動で、生温いものが顔を伝う。





「Aのシアワセ探し、しに来た」





ぽんと頭に乗せられた手のひら。重みは感じるのに、体温は感じられない。廉なのに、廉じゃない。



私の幸せは、廉がいないと始まらないのに。






*

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作者名:みう | 作成日時:2023年12月5日 21時

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