04.プレゼント ページ4
｢…っ、｣
｢久しぶりやのになんでそんな怖い顔してるん？｣
｢待…って、うそ、夢？｣
｢Aもついに頭おかしくなったかーオレの事忘れたん？｣
真っ白になった頭の中。目の前のことを処理できない。ずっと会いたかった人。ずっと求めてた人。
私の目の前にいる“生きている廉”の身体。
何度も呼んで欲しいと願った私の名前を呼ぶ“廉の声”。
｢ほんと、に…？｣
｢おん｣
｢ほんとに、…廉？｣
目の前にいる制服姿の男の子は、私がずっとずっと会いたかった“廉”なのだと、理解した瞬間に
じわじわと滲んでいく視界。ゆらゆらと揺れる廉。
｢ほんま泣き虫は変わってへんな｣
困ったように呟く声。眉毛を下げたかと思えば引き寄せられる身体。
ぎゅうと抱き締められた私の身体に回った、廉の長い腕。
本当なら聞こえるはずの心臓の音も、感じるはずの体温も
廉が生きているという証拠になるものは何も聞こえなかった、感じなかった。
だけど、それでも私の目の前には廉がいる。
夢じゃない。現実に、この世界に、廉がいる。
｢なんでっ、…なんでいるの…っ、｣
｢せっかくの誕生日やもん、Aに会いに行ったろかなおもて｣
｢廉は、死んだんじゃっ…｣
｢おん、死んだ。幽霊になってん、オレ｣
ガハハと楽しそうに、何とも思ってなさそうに笑う廉。
廉の口から発せられる“廉は死んだ”という事実。
ガンガンと頭が殴られるような、そんな感覚に陥る。
あの頃と同じように泣いている私を慰めるように、私の髪の毛を大きな手で撫でる。
苦しい苦しい苦しい。4年ぶりに会った廉。
やっぱり、私は廉が大好きで大好きで大好きで仕方がなくて、忘れることなんて出来ていなかった。そんなこと、出来るはずがなかった。
｢ユウレイでもなんでもいいから…離れないで、｣
もれたホンネに、廉は何も答えずに笑う。
｢…れ、ん？｣
｢あ、そうや！毎年毎年ケーキありがとうな、紫耀にもお礼言っといてや！｣
後で食べよなって離れて行った廉。
｢…っ、｣
すり替えられた話題。
4年ぶりに私の前に現れた廉は、一瞬だけ
悔しそうな、悲しそうな顔を見せた。
*
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作者名：みう
| 作成日時：2023年12月5日 21時
