18.壊れたロボット ページ18
何度無視をしてもしつこく鳴る着信。
珍しいとは思いつつも、きっと廉だろうと思い重い腰を上げた。
金曜日の帰り際、廉と喧嘩した。理由は些細な事だった。
廉の志望する大学と私の行きたい大学が違い、同じ所がいいからそこに行くといった私を止めた廉に、私が拗ねたのだ。
文句を言ってやろうと思った。もう日曜日ですけど、って嫌味をたんまりと言ってやるつもりだった。
携帯を手にする。画面に表示されている名前は、私が想像していた名前とは全く違った。
｢…A、…落ち着いて。落ち着いて、聞いて、｣
私がもしもしと言う間なんて無かったと思う。耳元で聞こえる海人の、聞いたこともない低い声。
｢…え、なに、ドッキリ？(笑)｣
｢ちがうよ、｣
｢いやいや、…嘘でしょ、｣
｢A、…今からそっち行く、｣
プツリと切れた電話。その場にヘタリと座り込む。
海人は確かに言った。廉が死んだ、と。
言葉の意味が全くと言っていい程、理解ができなかった。脳が本能的に拒否をしていた。
海人が家に来て、そこからはあまり覚えていない。思い出したくもない記憶なんだと思う。
・
・
｢事故、…だって｣
｢…、｣
｢A、…ちょっと休も、そこ座って、｣
壊れたロボットみたいに、指示をされないと何もできなかった。あの電話を受けた瞬間から、脳が考えることをやめてしまった。
・
・
日が暮れ始める夕方、信号待ちをしていた廉。同じく信号待ちをしていた兄弟。
横断歩道の信号が青に変わり、兄の手を振り解いて前を走る小さな男の子に、信号無視をした自動車が突っ込んできたそうだ。
その男の子を守るように、廉が庇って、死んだ。
｢Aの家の近くだったって、…会う約束でもしてた？｣
海人も泣いている。顔をぐしゃぐしゃにして。後から海人が呼んであろう平野くんは、俯いて何も言わなかった。
｢してない、…金曜日に、喧嘩、…して、｣
｢…、じゃあ、｣
｢なんで、…なんでわざわざ私の家の近くに、｣
拭いても拭いてもキリがないくらいに涙は溢れて、私の袖はびしょ濡れだった。海人も声を上げて泣いている。
沈黙の中、口を開いたのは平野くんだった。
｢廉、さっきまで俺といたんだよ、｣
俯いたままの平野くんが、消え入りそうなか細い声で話し出す。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みう
| 作成日時：2023年12月5日 21時
