17.もうすぐ ページ17
｢おはー｣
｢おはよう｣
一面に広がる、これでもかという程の桜の絨毯。ふわりと頬を撫でる風が優しくなった。
だいぶ過ごしやすくなってきた季節、隣の海人は眠そうに大きな欠伸をした。
｢結局一回も遊ばなかったね｣
｢海人が忙しそうだったから｣
｢はい、すぐ人のせいにする〜俺はA待ちでした〜｣
コツンと頭を小突かれる。右隣にいる海人が、ヒラヒラと舞う花びらを嬉しそうに目で追う。
｢…で、どう？｣
｢顔見れば分かるでしょ、惨敗中｣
｢だよねー、俺も｣
やっぱり今の私たちの話題はそれしかなく。気分が高揚するような景色とは裏腹に、私たちの重いため息。
｢分かってはいたんだけどね、｣
｢まぁ、落ち込んでてもしょうがないっしょ！次行こ、次！！｣
連日の面接。面接室に入った瞬間から察してしまう。またダメだ、と一度思ってしまったらもう終わりで、廉の言う通り、自信は顔に出る。
自信なんかないから、その分露骨に不安が顔に出てしまい、そのスパイラルから抜け出せないでいた。
｢今日は？この後なんか予定ある？｣
｢ないよ、どっか行く？｣
｢久し振りに行っちゃおうよ！ね！！｣
現地集合ね！早く着いた方ビール奢りー！！と走りながら海人が言う。大学4年生、春。
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・
｢俺ビールのむ〜｣
｢じゃあ、私もビールで｣
駅前の居酒屋。ザワザワと賑やかな店内を避けるように、テラス席に座る。
｢しょおも呼べばよかったね｣
｢平野くんにはちょくちょく会うから特別感ないかも(笑)｣
｢えー！！いいな、そんなしょおと会ってんの？！｣
｢んーそんな頻繁にでは無いけど、｣
俺も今度会いたいなぁ、とメニューを見ながら呟く海人。そうだった、海人は平野くんの事が大好きだった。
｢お待たせしました〜｣
運ばれてきたビール。シュワシュワと弾ける泡。
｢もうすぐだね、｣
海人が重そうに口を開く。夜になると、春といえども吹き付ける風も冷たかった。
｢…うん、｣
毎年、この季節になるとどうしても気分が下がる。
それは今日も同じで、そんな私を分かっているかの様に、空元気だった廉。
朝のお見送りも、振り返って見える窓越しの廉の姿も。私を感傷的にさせるだけだった。
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｢事故の日から、もうすぐ4年か｣
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廉がいなくなってから、もうすぐ4年が経とうとしている。
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作者名：みう
| 作成日時：2023年12月5日 21時
