01.ケーキ ページ1
寒さが本気を出し始めた1月。
コツンとヒールを鳴らしながら眩し過ぎる夜道を歩く。
「…はぁ、」
ダメだった。数日後来るであろう“不採用”の手紙を想像してガクリと肩を落とす。
私は将来、何をしているんだろう。
そんな不安に襲われながら、かじかんだ指先を暖めるように握り締める。
「いらっしゃ…、久しぶり」
ドンヨリと重たい足が行き着いた先。ここに来るのは何回目だろう。
「久しぶり、平野くん」
少し困ったような顔をした平野くんは、ちょっと待っててと店の外に出る。
きっと彼のことだから気を使って看板を【CLOSE】に変えてきたんだろう。
「そっか、もう、3年か、」
「あのバカ男、どこほっつき歩いてんだろ、」
「…Aちゃん、」
隣にいるはずの人がいなくなってから、3回目の今日。
1人で過ごす1月23日も今日で3回目だった。
「今年も作っておいたよ」
「ありがとう、廉も喜ぶね」
「そうだといいんだけど」
平野くんが弱々しく笑った。甘い匂いが香るこの場には相応しくない顔で。
“廉、お誕生日おめでとう!!”
・
・
廉がいなくなってから、3回目の廉の誕生日。
平野くんの愛情が沢山込められた小さめに作られたケーキ。
廉が生きていたなら、きっと顔を真っ赤にしながら「なんなん!恥ずいやん!」って笑うんだろうな。
*
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作者名:みう | 作成日時:2023年12月5日 21時