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えっ？、

自分でも、涙が流れたことにびっくりして。

声に出したのか、出さなかったのか
もう覚えてないけど、えっ？と思って

咄嗟に空いていた左手で
さっと頬の涙と、
1回で取りきれなかった目の下の涙を拭った。

だいぶ自分の世界にいたらしい。

たぶん、
赤ワインが届いてから今こうして気がつくまで。
時間にしたら1分、2分は経ってないと思う。

でも2人しかいない空間で
それだけの時間自分の世界にいて。

その事に気がついて、
慌てて

ーーごめんなさい、

と言った。

…ワインに酔わされてる。

自分で出した、最後。の決意と
裏腹に彼を知るほど、これからも。
と安易に出てくる言葉に蓋をして

気がついたらワインは3杯目。
杯数はたいしたことないけど
ペースが速すぎたのかも知れない

…あ、でも
彼がこの涙を見ていたとは限らない。

ワインのせいで
うまく回らないあたまではあったけど
どうにか冷静に、
ひとりの世界にいたことを取り繕った。

ーーあ、赤ワインほんと美味しいですね！
なんだろ、なんか赤ワイン飲んでたら
ぽーっとしちゃって、笑
部屋の香りと似てるからかな？
だいぶ自分の世界にいましたよね、私、、
なんの話ししてましたっけ？、

グラスを置いて
そう捲し立てるように話終わったとき
すごく久しぶりに田中さんの顔をみた。

ーどくん

……ワインのせい。
いまの鼓動はワインのせい。

そう思おうとするけど、

驚いたような、切ないような、
憂いのある大きな目で
じっと見つめてくる田中さん

蛇に睨まれた蛙
の表現は正しい気はしないけど

その刺さるような目から逃れたいのに
なぜか視線すら逸らさなくて。

ごくり、と生唾をのんだ。
鼓動が早い…

その鼓動とともに、
ぽたぽたと溜まっていった悲しさが
また今にも目から溢れ出しそうだった。

(溢れる、)

そう感じて、
必死に田中さんからの視線から逃れ

ーー、ちょっとペース早すぎたかも…
すみません、化粧室行ってきますね、、

そう言うと、少し慌てて席を立った。
想像以上に空間のゆがみ、
自分が酔っていることを認識して
ドアへ一歩歩き出そうとした時、

ぱしっ、と右手を掴まれた。