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全然落ち着かなくて暫く泣いてたらさすがに変だと思った謙ちゃんが「ハルちゃん？」とドアの向こうから私を呼んだ。
ハ「あっ、まって」
慌てて出した声が思ったように掠れていてバレたと思った次の瞬間に「入るよ」と謙ちゃんの低い声が聞こえて。
涙で濡らした頬を慌てて拭くと「なに一人で泣いてるの」と目を細めて私を見つめた。
ハ「けんちゃん、」
謙「うん？」
ハ「・・・っ、」
謙「いいよ、泣いても」
ハ「けんちゃん」
謙「俺しか見てないから」
ハ「っ、」
去年も同じことを言われたなぁ、と脳裏でそんなことを思い出す間も涙は止まらなくてもう一度謙ちゃんが抱きしめてくれると柄にもなく子供みたいに泣きじゃくってしまった。
呆れた顔をしないで、ただ抱きしめてくれる。
謙ちゃんだって仕事で忙しいはずで、それなりに疲れてるのに。
私の子供っぽい部分も、包み込んでくれる。
ハ「・・・はぁ、」
謙「辛かった？」
ハ「うん」
謙「よしよし」
私の頭を撫でて「よく頑張りました」って耳元で呟く。
その甘い声だけで辛いことも悲しいことも吹き飛ぶ。魔法みたいな人だ。
一緒にお風呂に入って、一緒にご飯を食べて。
謙ちゃんが私が話すのを待ってくれていつも以上に抱きしめてくれたからもう大丈夫だけど、寝る前になって「謙ちゃん・・・」と呼ぶと「ん？」と視線を合わせてくれた。
ハ「わたし、仕事辞めようかな」
謙「なんで？」
ハ「最近本当に大変で、帰ってくるたびに泣いちゃうくらい辛い時もあって」
謙「うん」
返事をしながら絡めた指先で私の指を撫でる。
ハ「謙ちゃんはどう思う？」
そう訊くと謙ちゃんは「確かに苦しんでるハルちゃんを見てるのは俺も辛いかな」と落ち着いた声で話してくれる。
謙「けど、CAはハルちゃんがやりたかった仕事でもあるし俺はCAのハルちゃんも大好きだし」
ハ「うん・・・」
「あんまり会えないのにいいの？」と問いかけると謙ちゃんはクスクス笑って「今更じゃない？」と私を見つめた。
ハ「そうだよね。ごめん」
謙「ううん、そうじゃなくて」
前も言ったと思うけど、と前置きを置いた謙ちゃんは「ハルちゃんが好きなことやってるならなんでもいいの」と笑った。
謙「そんなハルちゃんを好きになったんだよ」
ハ「・・・っ、謙ちゃん」
謙「あー泣かないで」
また泣き出した私を笑って涙を拭くと自分に寄せて「もう〜早く寝ようね」って頭を何度も撫でてくれる。
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作者名：愛美
| 作成日時：2020年7月5日 14時
