StLtH26 (ページ34)

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奥のカーテンで仕切られた場所はみゅうさん専用らしく、「めっちゃ散らかってるけど」とカーテンを退かしてくれて「失礼しまーす」とゆっくりそこに踏み入れる。マネキンに着せられた同じテイストのカジュアルなドレスとジャケットを見つめて思わず、「すごい」と口にしてしまった。

美「(笑)」

「みゅうさん一人で作ったの？」

美「うん、まぁ」

ちょーっとだけゆずポンに手伝ってもらったけどね、と小賢しい顔していうからその顔を見て笑うとみゅうさんは「触らなくていいの？」と私を見下ろした。

「触ってもいいんですか？」

美「もちろん」

頷くみゅうさんの顔を見て「じゃあ、」と口にしてドレスを触る。

細かい部分まで見つめて、みゅうさんはやっぱり才能のある人だと改めて思う。

私もワンピースをプレゼントして貰ったけど、みゅうさんの服を見るたびに同じ気持ちになる。

尊敬する。

何度もそう思った。

「ありがとうございました」

美「いいえ」

アトリエを出て家に戻る道中で改めてお礼を言うと彼は嬉しそうに頬を緩ませてそう返す。

美「楽しみだね」

「うん」

美「やっすーが噛まないか心配」

「肝心な時に噛むよね」

けど、きっと全部うまくいくよ、と当日を思い浮かべながら口角をあげると私を見返したみゅうさんが「そうだね」と笑ってくれた。

美「俺はほとんど終わったから、Aのお手伝いするね」

「え？いいの？」

美「補佐なので？」

「でも、チームハルさんもいるから」

美「そのチーム名なんなの(笑)」

「別名ハルさんの推しトリオ？」

美「(笑)」

みゅうさんも最近集中して作ってたから少し休んだら？と口にするけど「わかってないなぁ～」とおどけた口調でそう言うと赤信号で車が止まる。

ポン、と頭の上に大きな手のひらが乗ってその衝動でみゅうさんの方を向かされると近くに顔を持ってきたみゅうさんが「俺が手伝いたいの！」と微笑んだ。

「・・・っ、」

美「ふふっ」

一瞬にして、私たちの間に流れる空気を変えるみゅうさん。

高鳴る胸を無視するなんて、私には出来なかった。