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「夢を持つとまた強く生きていけるんじゃないか、って考えたの。バレエやってた時みたいに物怖じせず自分の意思を貫いて誰よりも真っ直ぐ生きて努力を重ねた先にステージに立って、踊りたいって」
美「・・・、」
みゅうさんの瞳が揺れる。
切ない顔して見るもんだから、クスッと笑ってしまった。
「でも夢って難しい。先生は大きなものじゃなくてもそれが夢ならなんでもいいって言ってくれたし、私も無理して探そうとはしてない。いろんなことにチャレンジするのも今は楽しいし、次の目標はバイトして、それから勉強して資格取るとこで、今はそれになんの大きな意味があるか分からないけど・・・ただやってみたいと思ってる。そうやって目の前で明確なものを積み上げたらいつか大きな夢が出来ると思った」
美「うん」
「みゅうさん」
美「ん？」
「みゅうさんは挫折したことある？」
私がそう問いかけると彼は「もちろん。いっぱいあるよ」って頷いた。みゅうさんの夢だってトントン拍子で上手くいってるわけじゃない。ただ、みゅうさんが挫折したり悔しい思いをしたのちに高い場所まできていてチャンスや運が後押ししていい流れを作ってたのではないのかと思った。私だってバレエで上手くいってる時はそうだった。
「そうだよね」
美「うん」
「・・・ごめん、訳わかんないよねこの話」
美「いや」
あのさぁ、A。とみゅうさんの落ち着いた声が聞こえて私は彼の横顔を見つめた。ゆっくり瞬きをするみゅうさんの睫毛は綺麗で、薄い唇がいつもより魅力的に見えて、高い鼻が影を作る。その横顔に見惚れている私にみゅうさんは「俺、楽しみだな」と呟いた。
「楽しみ？」
美「うん、ワクワクしてる」
「え？」
この会話の流れで「楽しみ」と「ワクワク」って単語が出てくるのか？と考えているとみゅうさんは続けて私に教えてくれた。
美「夢に向かうAの姿を見るのが楽しみ。夢を見つけるまでのAも、夢を見つけたあとのAも、知りたい・・・。今までのAは見ることは出来ないけど。これからのAの夢の話を俺は知りたい、と思ってるよ」
「・・・みゅうさん」
美「あ、プレッシャー掛けてるわけじゃないよ？」
「うん、わかってる」
美「そのタイミングが訪れるまで側で見てたいし・・・それからも見てたい」
俺のことをいっぱい応援してくれたAの応援を、俺はしたいよ。とみゅうさんは真っ直ぐ私を見つめた。
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作者名：愛美
| 作成日時：2020年7月5日 14時
