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PAST IVー４ページ5

数日後、発表会が近いのに紫耀が突然名古屋に帰ると言いだして少し違和感を感じた。

「何しに行くんだろう・・・」

ママに会いたかったのかも。
紫耀がママっ子なのは、彼の話から気づいていてよく「名古屋にいるママに会いたい」と口にしていたし楽しそうに電話しているのも見たことがある。

神「レッスンお疲れさま」

飲み物を渡し、隣に腰掛けるじんは夏休みも予備校に行ってたり勉強熱心で。
そんな彼を見ていると自分はバレエばっかで何も考えていないのかもしれないな、と少し罪悪感を感じる。

予備校帰りのじんとたまたま会って、少しだけ近況報告。

「じんは・・・どこ行くの？」

神「んー？大学？」

「うん」

神「まだわかんないけど」

「そっか」

Aは？バレエができるところ行くの？と、そう問いかけてくる彼は私がしたいことをよく理解しているんだなって思って小さく頷く。

「でも、もうやめろって言われてるの」

神「そうなんだ」

「うち、お兄ちゃんもちゃんと大学出たし・・・ちゃんとしたところ行って欲しいって言われてて」

神「バレエはダメなの？」

「バレエじゃ食っていけないって」

じんは少しだけ黙り込むと、「Aのバレエが見れなくなるのは、嫌だな」と小さく呟いた。

「・・・え？」

彼は小さく微笑むと「バレエしてるAって楽しそうだし、綺麗だよ」とただ遠くを見て言う。

・・・また紫耀と同じこと言ってる。

そう思いながら「ありがとう」って言えば彼は顔を私に向けて口を開いた。

神「俺は好きだよ」

神「バレエしてるAも」

そう言われて、ただ何も言えなくなり黙ったまま数秒目を合わせる。

「・・・嬉しいよ、ありがと」

嬉しくないわけがないんだ。

好きなことをしている自分を肯定して、好意を持ってくれること。

「今日は帰るね」

神「送ろうか？」

「ううん、いいや。ありがとう。」

じんの眼差しをもう見ていられなかった。

これ以上一緒にいると、おかしくなりそうだ。

この前紫耀の家でじんにされたことをどう捉えればいいかなんて子供の私にはわからないよ。