844 ページ40
本当は分かっていた。
じんが私のために別れを決断してくれたこと。
何から何まで本当に私に優しい人だから、
その優しさに最後まで甘えて、私は自分から変わろうとしなかった。
どんどん自分が嫌いになって、
こんなんで、じんに会えるはずなんてなくて。
遠くから焦った顔の玄樹が病室に入ったのを見て私は、「ごめんね。ほら顕嵐も戻って」と言った。
「みんな居た方がいいでしょ」
顕「お前も」
「・・・」
首を振る私に顕嵐は少し黙ると、「じゃあ病室の外で待ってて」と口にした。
それを聞いて私は素直に顕嵐の言うことを聞いた。
顕嵐が病室に入るのを見届けて、扉の近くで耳を立てる。
玄「もう、なにやってんの!?」
神「ははっ、ごめん」
「っ、・・・」
じんの声だ。
久しぶりに聞く、落ち着いた声に涙がまた溢れてどうしようもなくなる。
ああ・・・じんだ。
胸が苦しくなって、すべてを吐き出したくなる。
会いたい。
本当は、すごく会いたいよ。
本当は、抱きしめたいよ。
ぐっと拳を握って座り込んで泣いた。
じんの声を聞いただけで、ただ安心して。
生きててよかった、と心からそう思った。
あなたは、誰よりも幸せになるべき人だよ。
だから、こんな私なんかと一緒にいちゃダメなの。
そっと立ち上がって、その場から少し離れると「Aちゃんっ」と息の上がったサクラちゃんが居て。
泣いてボロボロな私を見て、サクラちゃんも泣きそうな顔をして私を抱きしめた。
サ「大丈夫?」
「うっ・・・」
首を振って、ただ嗚咽を零すとサクラちゃんは私の頭を撫でて「大丈夫だからね」って優しく声を出した。
彼女の優しい匂いが鼻に触れて、すべてを吐き出したくなる。
でも。
「ごめん、」
サ「・・・うん」
心配そうな顔をして私から離れると、「入ろう?」と問いかけてくる。
ただ首を振るとサクラちゃんが困った顔をして、それから顕嵐が病室から出てきた。
1752人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:愛美 | 作成日時:2019年3月10日 20時