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PAST Vー1 ページ17

本番がやってきた。
事前のリハーサルでは例のシーンがだいぶ良くなっていたけど、私はまだ不安が残った状態だった。

本番前に弱気になってしまうとダメなのに、ずっと心が落ち着かなかった。





今日が、私のこの先の人生を左右する日なのは分かっていた。
私がこの先もバレエを続けられるかどうかが決まる日。





そして、もしかしたら・・・紫耀と一緒に踊る、最後の日。






はぁ、と息を吐き鏡を見つめた。

私はこれからジーナになる。

王子様の心を掴む可憐で美しい女の子になる。





頭に髪飾りを着けた瞬間、私の中のスイッチがオンになった。








「まもなくでーす!」







スタッフさんの声がバックステージに響き、深く息を吐く。
開演を知らせるブザーの音が、いつもより長く鳴り響いた気がした。







眩しいほどのスポットライトでキラキラしたステージ。

前語りの後にすぐに自分の出番となる。




ちゃんとした舞台で、ヒロインを演じるのが初めてなだけで感じたことのない感覚が私を襲う。

無我夢中で踊って、会場中の視線が自分に向かっているのを感じる。




そう、私は今物語の中心にいるんだ。

物語を理解する上で、ジーナを自分と置き換えて考えたのだ。

ジーナはお姫様。
格好良くて強い王子様と恋に落ちるお姫様。


ジーナが私なら、王子様は紫耀。
これから訪れる二人のシーンに、スポットライトに照らされる二人きりの場面に胸が踊る。


もうすぐ。
もうすぐだよ、ついに紫耀と踊れる。



モエと一緒にお話をするシーンがやってきた。
モエ下町の子でバレエの友達という設定。



お姫様の、引き立て役。
そして、同時にライバルである。





「・・・、」




そして、ただ一つだけ欠けている配役があった。

幼馴染のエル。

お姫様を見守る、友人A。






そこだけが原作のお話と違う部分だった、この舞台には友人Aがいない。






でも、私は知っている。
それを自分に置き換えた時自分にとって友人Aとなる人物を、私は知ってる。






お姫様と、王子様に、ライバル。

そして、友人A。





「・・・」

神「・・・、」





スポットライトの向こう側に向かって目を細めた。

友人Aは、彼だ。

客席に座っていたとしても、私にはぴったりキャストが揃った舞台だった。

PAST IVー2→←◆◇ PAST V -REGRETS- ◇◆



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設定タグ:愛美 , 森田美勇人 , 7ORDER   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:愛美 | 作成日時:2019年3月10日 20時

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